岩崎総合法律事務所では、上場企業・スタートアップのお客様に、ストック・オプション(SO)、リストリクテッド・ストック(RS)、パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)など、株式報酬制度の設計・発行に係るサポートをします。
発行や運用に係る法務だけでなく、報酬委員や外部アドバイザーとしてサポートすることも可能です。
以下では株式報酬を巡りよく質問いただく事項を簡単に取り上げています。
Q: 株式報酬など金銭以外の報酬を給付するにあたって、役員の納税資金にはどのように配慮したらよいでしょうか。
A: 役員が受給した株式を売却しやすくする方法や、納税資金相当の金銭報酬をミックスして支給する方法などで対処することが望ましいといえます。
報酬を受領する場合、所定の時期に納税義務が生じます。
流動性の高い金銭報酬で受領する場合には、当該報酬額の中から納税すれば足りますので納税義務の負担は重くはなりません。一方、株式報酬など金銭報酬ほどには流動性が高いとはいえない報酬で受領する場合には、納税原資をどのように確保すると考えるか問題になります。
株式報酬の大きさやそれぞれの役員の資力によっては納税の負担がとても大きくなります。
これによって事実上インセンティブの効果が弱まったり、経営に集中できない事態が懸念されます。
まずは、受領した株式を売却してそこから納税することが選択肢となります。
しかし、このとき障害となりうるのがインサイダー規制です。インサイダー規制によって、処分したいときに処分できなくなるおそれがあります。
この点では、知る前契約を利用することが有効です。しかし、処分時期が固定されてしまう関係で、望ましくないタイミングでの処分とならざるをえないリスクがある点に注意が必要です。なお、報酬決定から発行までが短期間となる場合には、契約時に未公表の重要事実があることがあり、このとき知る前契約としての要件を満たさない場合があります。このようにインサイダー規制の適用を受けない知る前契約の利用については慎重な手続が必要となりますので専門家のサポートを受けるべきといえます。
次に、株式報酬の付与と同時に納税資金用として金銭報酬も付与することが選択肢となります。当該金銭報酬を損金計上するため、どのような法的性格を持たせて付与するかは検討が必要です。
既に付与済みの株式報酬について、納税資金の負担が重く、なんら手当がされていない場合には、事後的に株式報酬の受給時(課税時期)に合わせて納税資金相当額を別途報酬として支給するための手続の可否を検討します。
納税の負担が原因となってインセンティブが阻害されてしまうようなことは回避するべきです。
納税資金相当額を金銭報酬として支給することがシンプルな解決策ですが、これが難しい場合には知る前契約の要否・可否を検討します。知る前契約の検討は慎重に行うべきですので専門家のサポートを受けることをお勧めします。
『株式報酬をめぐるトラブルの予防・解決の実務Q&A ――ストック・オプション リストリクテッド・ストック パフォーマンス・シェア』
著者 岩崎 隼人
出版社 日本法令
定価 3,520円(税込)
発行日 2024年5月19日
発行形態 単行本・256ページ
ISBN 9784539730133
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