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2024年1月16日(火曜日)
【株式報酬】逆インセンティブの問題

岩崎総合法律事務所では、上場企業・スタートアップのお客様に、ストック・オプション(SO)、リストリクテッド・ストック(RS)、パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)など、株式報酬制度の設計・発行に係るサポートをします。
発行や運用に係る法務だけでなく、報酬委員や外部アドバイザーとしてサポートすることも可能です。
以下では株式報酬を巡りよく質問いただく事項を簡単に取り上げています。

逆インセンティブの問題

Q: 逆インセンティブの問題とはどのようなものでしょうか。

A: 経営戦略の実行のために付与したインセンティブであるにもかかわらず、設計に問題があるために逆のインセンティブ、すなわち経営戦略達成のための方向とは真逆の方向にインセンティブ付けしてしまう問題です。逆インセンティブの問題は投資家からも批判を受けるので、設計段階では逆インセンティブにならないようにします。万が一後になって逆インセンティブの設計になっていることが発覚した場合には、事後的に対処する必要があります。

よく問題になる事例と法律関係

まず、毎年株式報酬型ストックオプションを付与するような報酬制度で逆インセンティブの問題が生じます。
つまり、株価が上昇した場合には株式や新株予約権の価値が高まるため、役員に付与される個数が減少します。逆に、株価が下落した場合には付与される個数が増加し、その後の権利行使時に株価が上昇していると、結果として株式報酬額が増大します。このように、付与時点の株価をあえて下げてようとする動機付けを生んでしまう状況が、逆インセンティブの問題として生じます。

また、パフォーマンスシェアなどについても逆インセンティブの問題が生じえます。
パフォーマンスシェアなどは金銭報酬債権の付与から株式発行までに業績評価期間を設けるため相当の時間的間隔が設けられます。この点で、例えば、金銭報酬債権を確定額で付与すると、業績評価期間終了時点で株価が低ければ多くの株式を取得でき、逆に株価が高くなれば株式の数は少なくなります。このように、業績評価期間終了時点をターゲットに株価を低価させようとするような動機付けを生んでしまう状況が、逆インセンティブの問題として生じます。

どのような悪影響をもたらすか

この逆インセンティブの問題は投資家からネガティブに評価されます。
反対票が投じられ、場合によっては議案が否決される場合もありえます。

どのように対処するべきか

株式報酬型ストックオプションについては、付与時点の評価額が不当に低い金額でないことを担保するため、評価機関と連携して評価額を算出し、必要に応じて算出過程の開示を検討します。業績条件をつけることも重要です。

パフォーマンスシェアなどについては、最終的な付与時点の株価に見合う金額の債権を報酬として付与するように設計します。不確定額報酬決議になるため、決議にあたっては、計算方法を明らかにすることが重要です。

まとめ

逆インセンティブとなっては本末転倒であり、これを疑わせる状況となれば投資家からの信頼を損ねる恐れもあります。設計にあたっては逆インセンティブの疑いを生じさせないよう、専門家を交えてよく検討したほうがよいでしょう。

 
 

『株式報酬Q&A』書影

『株式報酬をめぐるトラブルの予防・解決の実務Q&A ――ストック・オプション リストリクテッド・ストック パフォーマンス・シェア』

著者 岩崎 隼人
出版社 日本法令
定価 3,520円(税込)
発行日 2024年5月19日
発行形態 単行本・256ページ
ISBN 9784539730133
 
Amazonほか各オンラインストア、出版社直販サイト、全国の書店にて


 
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