富裕層の方が離婚する際、財産分与にあたって「財産分与対象財産の評価」を巡る問題が高確率で発生します。
その保有する財産の規模が大きい場合、いくらで評価するかで結果が大きく異なるためです。
今回は、「財産分与対象財産の評価」の問題のうち「動産・債権の評価」の問題について解説いたします。
資産の評価はこれを専門とする機関が存在します。しかし、かかる機関は必ずしも裁判実務のプロフェッショナルではありません。
取引で活用されるような資産の評価と公正な裁判のために活用されるべき評価はそのポイントが異なるところがあります。
したがって、評価については、専門機関に依頼する際にも、裁判実務の傾向、その依頼趣旨や前提事実について専門機関によく説明し、内容についてよく協議することがポイントです。
岩崎総合法律事務所では、資産家、経営者、投資家、高額所得者などの「富裕層」と呼ばれるお客様に対する法務サービス Legal Prime®を提供する中で、財産分与案件のノウハウ、経験が蓄積されてまいりました。
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離婚問題や財産分与問題でお悩みの方をはじめ、現在は離婚問題が顕在化していないものの将来の離婚対策やファミリーガバナンスについてご関心をお持ちの方は、ぜひ当事務所までご相談ください。
※本記事はコラム「遺産の評価を巡る問題③ ~動産・債権の評価~」を離婚問題向けにアップデートしたものになります。相続関係でお悩みの方は同コラムもあわせてご覧ください。
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株式や不動産はその価値が一義的に定まるものではなく、評価を要します。
その評価方法には様々あり、評価方法毎に算出される評価額に大きな差が生じることはよくあることです。
また、たとえ同じ評価方法であったとしても、その評価の前提にすべき事実関係をどのように設定するかによっても評価額には差が生じます。
このため、評価を要する資産については、その評価方法や前提事実をめぐって問題となります。
評価に関する調査が不十分であるなどにより、不当に請求額が低かった場合には本来の権利は実現しません。
一方で根拠なくいたずらに高額な評価を主張しても、結局採用されないうえに裁判所に納付する手数料が高額になったり、裁判官にこちらに不利な印象を与えてしまうことにもなりかねません。
このため、あるべき合理的な評価額がどのようなものであるかを把握した上で臨むことが重要です。
なお、骨董、古美術、絵画などの動産の評価をするにあたっての基準時は、現在時点を基準として評価します。
財産分与対象財産には債権が含まれることもあります。
財産分与の場合には、通常は債権の額面どおりの額が評価額となります。
もっとも、財産分与ではなく、遺産評価の場面では、債権は、債務者の資力や担保等を踏まえて回収可能性を考慮して評価されます。
古い裁判例かつ相続の場面での裁判例ですが、大審院大正7年12月25日判決(民録24・2429)は、十分な回収可能性がある債権であることを認定の上、額面通りの価値があるものと評価しています。
このような遺産評価の場面での債権の評価方法を踏まえて、財産分与の場面においても、債権が債務者の資力や担保等を踏まえて回収可能性を考慮して評価される可能性はあります。
富裕層個人が経営する会社に対する役員貸付金や立替金をはじめ様々な債権が財産分与対象財産に含まれる場合が多いです。
そしてその額面は非上場のオーナー企業や資産管理会社の場合には大きくなる傾向があります。
このとき、この債権は、回収可能性がないという状態でない限りは、上記のとおり額面どおりで評価されます。
オーナー企業も、資産管理会社も多くの場合債務超過ではありませんので、回収可能性ありということになり額面で評価されます。
しかし実際のところは回収しようとすることはありません。
回収(返済)をすれば、資金繰りに支障が生じるなど会社の運営維持に問題が生じてしまう可能性があるからです。
そうすると実のところ回収可能性がないようなものであって実質的に価値のないものとも思ってしまいますが、財産分与の場面ではそうした評価がされることはなくあくまで額面にて評価されます。
こうした財産分与対象財産に対する当事者の認識・価値のとらえ方と裁判実務のギャップが財産分与紛争を生じさせる要素の一つとなる場合があります。
財産分与対象財産には動産が含まれることもあります。
多くの場合全体の財産分与対象財産に対して動産の価値が占める割合は小さく、それほど争点になることはありません。
しかし、富裕層の場合には古美術品等高価な動産を保有していることも多く、軽視できない価値を有することがあるため争点になることがあります。
その真贋や価値について、美術商の意見や過去の取引額、取得価額などを参考にしながら評価を試みることになります。
不動産や株式と比較して、評価方法が確立していないものや仮に評価方法自体存在していても当該動産の評価要素が特定できない場合も多く、その規模が大きい場合には事実関係に即した合理的な分析が重要といえます。
以上、特に富裕層世帯の財産分与で問題となる動産・債権の評価方法について解説してきました。
これらの論点について正当な結果を求めるためには、事実関係及び法律関係を整理して、適切な分析に基づいた方針のもと、正確に主張立証していくことが重要です。
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※ご相談の内容や、ご相談の態様・時間帯等によっては、あらかじめご案内の上、別途法律相談料をいただくことがございます。