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2026年4月10日(金曜日)
共同親権で進学や財産管理はどう変わる?ー押さえておくべきポイント

Question

令和8年(2026年)4月から共同親権が始まると聞きました。共同で行使する対象となる権利はいくつかあるようですが、私立学校、ボーディングスクール、留学など、高額の出費が見込まれる進学について、どのような問題が生じるのかが気になります。また、子ども名義の株式の管理など、子どもの財産の管理についても問題が生じる可能性が出てくるのではないかと不安です。共同親権が導入されると、従来の単独親権と比べて具体的にどのような点が変わるのでしょうか。
 

Answer

共同親権の対象となる事項すべてについて、共同親権を選択した場合、子どもの居所や進学先の決定、重大な医療行為、子どもの財産の管理および子どもの身分行為(苗字の変更等)の代理など、親権に関わる重要な事項はすべて父母が共同で行使しなければなりません。

たとえば、子ども名義の銀行口座や証券口座の開設には、他方の親権者の同意が必要となります。また、進学先の決定に関しては、より複雑な問題が生じる可能性があります。

他方の親権者の協力が得られない場合には、裁判所に対して、特定の事項に関する「親権行使者の指定」の調停や審判を申し立て、特定の事項に関して単独で親権を行使できるようにしなければならない場面も出てくるでしょう。
子どもの進学に関する事項については、離婚時の監護者の定めや監護の分掌の定めなど実務上複雑な問題も絡みます。

共同親権という選択肢が増えたことで、決定すべき事項も多岐にわたります。子どもの将来を見据えた設計をする場合には、弁護士など専門家に相談し、子どもの将来に支障が生じないように早くから体制を整えることが鍵となります。


 

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ポイント解説

令和8年(2026年)4月から共同親権法制が施行されています(819条第1項等)。

法施行前は、単独親権制度のみであったことから、離婚時において親権者と定められた者が、進学先となる学校との契約(在学契約)や子どもの財産管理などをすべて単独で行うことができました。

単独親権下においては、単独親権者が決定した進学先に子どもを通わせ、他方親は費用負担だけを求められる場面があったり、単独親権者の財産管理能力に疑問があったとしても、管理権を委ねざるを得ない状況にありました。

しかし、共同親権を選択した場合は、子どもの進学先の決定や、子どもの財産の管理に関し、原則として父母が共同して親権を行使する必要があります。これにより、これまで不安を抱いていた他方の親もこれらの方針決定に関与できるようになりました。

共同親権導入の背景には、離婚後であっても、父母双方が適切な形で子どもの養育に関わりその責任を果たすことが、子どもの心身の健全な発達に資するという理念があります

もっとも、父母間で、子どもの進学や子どもの財産の管理について、意見が対立することも少なくないと思われます。意見の対立が生じた場合には、裁判所の手続を通じて、どちらの親権者が親権を行使するのが子どもの利益に資するかという観点から、特定の事項について親権行使者」を裁判所に指定してもらうこととなります(824条の2第3項)。

以下では、論点となることが想定される子どもの進学先の決定(在学契約)と子どもの財産の管理について詳細に解説していきます。また、今回の民法改正に関するルールの概要については、こちらの法務省のパンフレットもご覧ください。
 
共同親権イメージ

共同親権により離婚後も父母双方が養育に関わることができるようになったが、新たな悩みの種も生じている

 

在学契約

子どもの進学先の決定(在学契約)については、「子どもが契約当事者となる場合」(親が親権者として法定代理権を行使する場合)と「親が当事者となる場合」(親が学校と在学契約を締結する場合)との2パターンが考えられます。

まず、「子どもが当事者となる場合」は、まさに法定代理権を行使する場面にあたります。進学先に関して父母間で協議が整わない場合には、特定事項に関する「親権行使者指定」の審判の申立を行うことにより、父母いずれを親権行使者として指定するのが子どもの利益にかなうかを裁判所に判断してもらうこととなります。

親が当事者となる場合」であっても、協議が整わないときは同様に、特定事項に関する「親権行使者指定」の審判の対象となり得ます。

もっとも、離婚時に共同親権を選択した上で、監護者を指定している場合や、教育に関する事項について、監護の分掌の定めがある場合には、監護者である親(教育事項に関して監護権を行使することとなった親)が単独で、在学契約を締結できます(766条第1項、824条の3第1項)。

なお、父母間で協議が整わないまま、子どもの入学期限が迫っているような場合は、「子の利益のため急迫の事情があるとき」に該当すると解されるため、共同親権者一方の判断において、在学契約を締結することが認められる余地があります(824条の2第1項3号)。
 
 

子どもの財産管理

子どもの財産の管理について、具体的に問題となる場面としては、例えば、経営者である親が自社株(ないしそれを保有する資産管理会社の株式)を子どもに贈与した場合や、子どもが交通事故の被害者になり多額の損害賠償金が支払われた場合などが挙げられます。

このように、子どもが親権者による管理を必要とする財産を手にした際、その使途や処分を巡って、父母間に対立が生じることがあります。

このような場合においても、特定事項に関する「親権行使者指定」の審判の申立を行うことにより、いずれが子どもの財産の管理を行うのが子どもの利益にかなうのかを裁判所に判断してもらうこととなります。

なお、子ども名義の口座であっても、たとえば親が教育資金を貯蓄している場合は、親の財産と評価するのが適切な場合もあります

一方で、子どもが小遣いやアルバイト代を貯金していた場合は、子どもの固有財産であり、そもそも、親権者の管理に服さない範囲の財産については、「親権行使者指定」の対象外となる可能性に留意が必要です
 
 

あやふやな約束ではなく合意書で対策を

令和8年(2026年)4月から導入されている「共同親権」は、離婚後も子どもの養育に双方が関わり続けるという大切な理念を掲げています。

一方で、実情としては誰が・何を・どこまで決めるのかという新たな悩みの種を抱えることにもなりかねません。

特に進学や財産管理といった、子どもの将来を左右する重要な局面で意見が食い違ってしまった場合、最終的には裁判所の手続きに頼らざるを得なくなります。しかし、子どもにとって最も大切な時期に、親同士が争い続けることは、決して望ましいことではありません。

共同親権という新しい選択肢を、子どもの笑顔を守るための「安心な形」にするためには、制度を表面のみで理解するだけでは不十分です。将来起こりうるトラブルをあらかじめ予測し、あやふやな約束ではなく、実効性のある合意書を作成しておくといった事前の備えが、これまで以上に重要になります。

そのプロセスにおいて、法律の専門知識はもちろん、これまで数多くのご家族の問題に向き合ってきた私たちの経験は、必ず大きな支えとなるはずです。離婚に向けた準備、離婚後の不安を解消するために弁護士がサポートできる内容については、以下のコラムをご参照ください。
 コラム 「離婚問題の決着に向けて 〜離婚のプロセスと準備〜」
 コラム 「離婚後の生活が不安な方へ 〜法的手続にとどまらない弁護士の役割〜」

「何を相談すればいいのか分からない」という段階でも、決して早すぎることはありません。大切な子どもの未来に迷いや支障が生じないよう、まずは一度、当事務所にご相談ください。
※ ご相談の内容や、ご相談の態様・時間帯等によっては、あらかじめご案内の上、別途法律相談料をいただくことがございます。

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