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2022.2.1
医療法人が「MS法人」を設立するメリットと注意点

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医療法人の運営の効率化や節税対策の観点から、MS法人(MS=メディカル・サービス)を設立するという手段が有効であるということは、近時広く知られるようになりました。
しかし、設立後、本当にメリットを享受するためには、いくつかの注意点があります。

本コラムでは、医療法人がMS法人を設立・運営する際のポイントを、Q&A形式で解説します。
今後MS法人の設立を検討している方や、設立済みのMS法人の在り方を再検討したい方は、当事務所まで直接お問い合わせください

 

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目次
  1. どのような医療法人がMS法人を持つべきでしょうか?
  2. そもそもMS法人を設立する理由を教えてください。
  3. MS法人の具体的なメリットを教えてください。
  4. MS法人を設立する際、最も注意すべきポイントを教えてください。
  5. MS法人の代表者と株主は誰にすべきですか?
  6. MS法人の事業承継や廃業までを見据えたシミュレーションについて教えてください。

 

Q1. どのような医療法人がMS法人を持つべきでしょうか?

医師イメージ

医療法人の運営や事業承継におけるメリットを見定め「MS法人」の活用を検討しよう

さまざまな考慮事情がありますが、ごく平易な形で整理すると、概ね以下の条件を満たすような医療法人は、MS法人の設立を検討すべきでしょう。

① 出資持分ありの医療法人である
② 皮膚科、歯科、眼科または婦人科を標榜している
③ 年間売上が1億円以上
④ 理事長報酬が3000万円以上
⑤ 離婚リスクが大きくない(又は離婚リスクを予防できる)

Q2. そもそもMS法人を設立する理由を教えてください。

2007年に出資持分のある医療法人の設立は禁止されましたが、いまだに多くの医療法人が出資持分ありのものです。

医療法人は配当を出すことが法律上禁止されています。そのため、利益剰余金が蓄積されると事業承継時の税評価額が大きなものとなり、承継時の税金が高くなるというリスクがあります。
事業承継時には、納税資金を用意するため資産処分の検討が必要になることもありますが、必ずしも処分は簡単ではありません。そもそも病院経営のために必要な資産であれば処分できませんし、出資持分の処分を検討するにしても、買い手を見つけることは容易ではありません。

したがって、医療法人に多額の利益剰余金が蓄積されていると、銀行から融資を受けて納税資金を用意したり、最悪の場合には、そもそも承継をあきらめて他の医療法人等に売却することを検討することもあります。

このように医療法人に利益剰余金が蓄積しすぎることには問題がありますが、この対策の一つとして、MS法人があります。MS法人は、実質的に、医療法人に積み上がる利益を吸収する役目を担います(例えば、従前医療法人で運営していた関連事業や事務作業等をMS法人に移管するなど)。

Q3. MS法人の具体的なメリットを教えてください。

MS法人を持つ具体的なメリットは、概ね以下のような点にあります。

事業運営上のメリット(所得税・法人税対策)

  1. 所得分散効果がある(所得税は累進課税なので、親族などに分散した方が所得税を圧縮できます。)
  2. MS法人への支払いにより、医療法人に経費を計上し、利益を減らすことができる
  3. 医療法人にストックした資金を元手に、退職金を準備することができる(退職金での受け取りは税務上大きなメリットがあります。)
  4. MS法人を通じて、有価証券や不動産などへ投資したり、保険を活用したりすることができるようになる

事業承継に向けたメリット(相続税対策)

  1. 医療法人持分の評価を下げることで承継時の納税額を抑えることができる
  2. 後継者や親族をMS法人の役員や従業員とし、給与、役員報酬、配当などを支払うことができる(実質的な生前贈与となり、相続税対策の一環となります。)
  3. 医療法人の後継者に納税資金を用意できる
  4. MS法人は医師ではない後継者にも承継させることができる

Q4. MS法人を設立する際、最も注意すべきポイントを教えてください。

MS法人の設立時に最も考えるべきポイントは、MS法人の代表者と株主を誰にするか、そして、事業承継や廃業までしっかりと見据えたシミュレーションを行うことです。

以下、それぞれの項目で説明していきますが、こうした検討は、医療法人の運営や事業承継に詳しい専門家とともに行うべきです。

Q5. MS法人の代表者と株主は誰にすべきですか?

医療法人の代表者が、そのままMS法人の代表者に就くことは、不可能ではないものの、一定のハードルがあります。このため、医療法人代表者の配偶者を、MS法人の代表者にすることも多いと思われます。

また、医療法人の代表者が株主になることについては特段制限されていないものの、配偶者を代表者にする流れで、配偶者を100%株主にするというケースも多いと思われます。

このように配偶者をMS法人の代表者・株主としている場合、離婚リスクが生じてしまうと、離婚問題に決着がつくまでの間、自身は株主又は代表者としてMS法人に対して権利行使できないため、著しく不安定な立場に置かれます。

離婚リスクは、経営者医師に限らず大変大きいリスクと言えますが、特にMS法人の代表者・株主を配偶者としている場合、離婚リスクがより深刻なものとなるケースが多いです。そのため、MS法人の代表者・株主を、自ら(医療法人代表者)とするか、配偶者とするか、それ以外の者とするか、といった人選は、慎重に行う必要があります。

また、仮に配偶者にするとした場合であっても、事前に「夫婦財産契約」や、婚姻の後に行う「婚後契約」にて、離婚リスクをコントロールできないかは、必ず検討すべきです。

Q6. MS法人の事業承継や廃業までを見据えたシミュレーションについて教えてください。

上述したように、MS法人の設立時には、その事業承継や廃業までを見据え、しっかりとシミュレーションすることが重要です。
設立当初に節税できるかなどといった目の前の問題は当然検討するはずですが、MS法人の帰趨まで考えると、最終的にあまり意味のない(最悪の場合コストだけが増える)プランニングとなってしまわないか、慎重に検討しなければいけません。

シミュレーションの出発点は、経営者医師自らのキャリアプラン、ライフプランに見通しをつけることです。

例えば、MS法人を設ける大きなメリットの一つとして、医療法人にストックした資金を元手に退職金を準備することができるという点があります。しかし、経営者医師が生涯現役を計画している場合には、意義が乏しい場合もあります(例えば、退職金をもらってもその時点で使い道がなければ、資金需要のある年代に有効に活用した方が、税金が発生することを考慮してもなお合理的である場合もあるでしょう)。

このようなシミュレーションは、医療法人の設立・運営はもとより、資産家・経営者の資産管理や家事事件の経験が豊富な弁護士とともに行うことが望ましいといえます。

 
 


 
 

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以上のとおり、医療法人の経営に当たってはMS法人の有効活用を積極的に検討すべきですが、その検討にあたっては、資産家・経営者の資産管理に詳しい専門家ととも行うべきです。

岩崎総合法律事務所「Legal Prime」では、プライベートバンカー資格を有する弁護士が、資産家・経営者向けリーガルサービスの提供経験を踏まえ、医師の皆様を全力でサポートします。

また、岩崎総合法律事務所では、経営医師個人の問題だけでなく、法人の課題解決のためにもサポートしています。

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