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2019年7月2日(火曜日)
資産の多い夫婦が離婚する場合の財産分与

皆さま、こんにちは。

岩崎総合法律事務所は、離婚問題にも積極的に取り組んでおり、財産分与、養育費、親権などに関して、多くのご相談をいただいております。

また、弊所が今年4月から提供を開始しております「Legal Prime」の離婚サービスでは、共有財産が220億円の事例(下記参照)など、資産が多いご夫婦特有の問題について、過去の裁判例・審判例を踏まえた適切な主張・立証を行うことで、お客様にとって最善の解決となるようなサポートを心がけております。

サービス内容の詳細は、「Legal Prime」特設サイトをご参照ください。

そこで今回は、離婚問題の中でも特に争いとなりやすい「財産分与」について、皆さまに知っておいていただきたい基礎的な知識から、資産が多いご夫婦特有の問題、トラブル予防法までを、Q&A形式でお話させていただきます。


目次
  1. 財産分与とは ~そもそも「財産分与」とは何ですか?~
  2. 財産分与の方法 ~財産分与はどのように行うのですか?~
  3. 財産分与の範囲 ~財産分与を行う場合、全ての財産を分け合うことになりますか?~
  4. 富裕層の特殊性 ~資産家・富裕層特有のトラブルにはどのようなものがありますか?
  5. 資格(医師免許など)や技能(スポーツ選手など)を有する場合の対応法 ~医師やスポーツ選手になるためにしてきた努力は考慮してもらえますか?~
  6. 共有財産220億円のゆくえ ~経営している会社が上場しましたが、上場による株価上昇分も財産分与の対象となりますか?~
  7. 株価上昇分の財産分与 ~自分の経営する会社の役員に婚姻相手を就任させていた場合、株価上昇分も財産分与の対象となりますか?~
  8. キャピタルゲインの財産分与 ~婚姻後に取得した株式の売却益も財産分与の対象となりますか?~
  9. トラブル予防法 ~財産分与のトラブルを未然に防ぐ方法はありませんか?~

Q. そもそも「財産分与」とは何ですか?

A.
婚姻中の形成された夫婦の共有財産を分け合うことを財産分与といいます(民法768条1項)。
財産分与は一般的に以下の3つに分類されます。

  1. 清算的財産分与 夫婦で協力して形成した財産を清算する目的で支払われるもの
  2. 扶養的財産分与 専業主婦など、離婚後の生活維持が困難な場合に支払われるもの
  3. 慰謝料的財産分与 離婚原因を作った方(有責配偶者)が支払う慰謝料の性質をもつもの

このうち、「慰謝料的財産分与」は慰謝料として別に請求され、「扶養的財産分与」は養育費として別に請求されるケースが多いので、財産分与特有の問題として実務で頻繁に争いとなるのは「清算的財産分与」です。

なお、資産が多いご夫婦の場合、離婚後の生活環境が大きく変わることが多いため、「扶養的財産分与」として一定額の支払いが命じられることもあります(養育費として請求される場合も同様です)。

Q. 財産分与はどのように行うのですか?

2分の1ルールを基本としながらも、財産分与の方法や割合は夫婦によって様々

A.
清算的財産分与を行う場合、婚姻中に形成された財産は、夫婦が共に協力して築いたものであるという考えを前提とします。

そのため、実務においては、夫婦で財産を2分の1ずつ分け合うという「2分の1ルール」が基準となり、寄与度に応じて分与割合を修正していくこととなります。

後述しますが、資産家・富裕層の方の場合にはこの2分の1ルールが大幅に修正される傾向にあります。

Q. 財産分与を行う場合、全ての財産を分け合うことになりますか?

A.
財産分与の対象となるのは、夫婦で協力して形成した財産であり、これを「共有財産」といいます。そのため、婚姻前から保有していた財産や、相続や贈与を受けた財産などは共有財産には含まれません。このように、夫婦の一方が単独で保有する財産のことを「特有財産」といいます。

共有財産に含まれるかどうかは、財産分与を行う上で非常に重要な問題です。共有財産に含まれるのはおかしいと考える財産については、特有財産の主張などを行うこととなります。

Q. 資産家・富裕層特有のトラブルにはどのようなものがありますか?

A.
財産分与を行う場合、2分の1ルールを基準として、共有財産形成の貢献度(寄与度)に応じた分与割合を決定します。資産が多いご夫婦の場合、以下のような特性から特有の検討、主張をする必要があります。

・ご職業の特性
経営者、医師、公認会計士、スポーツ選手など、特殊な資格や技能を有している場合、婚姻前からの本人の努力が収入に大きく影響しているため、その分貢献度を有利に主張していくことになります。後述のとおり、判例も積極的な姿勢を見せています。

・ご資産の特性
一般的なご夫婦に比べて規模が大きく、有価証券(新株予約権を含む株式、国債など)、仮想通貨、不動産、動産(絵画、宝飾品、貴金属など)、預貯金、信託財産、ゴルフ会員権など、種類が多様かつ複雑であることが多いため、資産の評価方法や分割方法につき、よく分析、検討の上主張していく必要があります。

Q. 医師やスポーツ選手になるためにしてきた努力は考慮してもらえますか?

特殊な資格や技能に基づいて形成された財産は、財産分与の際に考慮されることが多くある

A.
資格(医師免許など)や技能(スポーツ選手など)を習得するまでの事情を考慮してもらうよう主張することは可能です。資格を持つ一方の努力や能力を認めた実例をご紹介いたします。

会社員である妻が、病院(医療法人)経営者で医師でもある夫に対して、共有財産(約4億円)の半額(2億円)を請求したケース
(福岡高裁昭和44年12月24日判決)

裁判所は、2分の1ルールが基準となることは認めつつも、妻の「協力もさることながら、一審被告(夫)の医師ないし病院経営者としての手腕、能力に負うところが大きいものと認められるうえ、一審原告(妻)の別居後に取得された財産もかなりの額にのぼっているのであるから、これらの点を考慮すると財産分与の額の決定につき一審被告の財産の二分の一を基準とすることは妥当性を欠く」として、2億円の請求に対し、2000万円の限度で請求を認めました。

主婦である妻が、病院(医療法人)経営者で医師でもある夫に対して、共有財産(約3億円)の半額(1億5000万円)を請求したケース
(大阪高裁平成26年3月13日判決)

裁判所は、2分の1ルールが基準となることは認めつつも、以下のような場合には2分の1ルールの修正を検討するべきであると判断しました。

  1. 夫婦の一方が、スポーツ選手などのように、特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが、加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり、通常の労働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合など、高額の収入に将来の生活費を考慮したベースの賃金を前倒しで支払うことによって一定の生涯賃金を保障するような意味合いが含まれるなどの事情がある場合
  2. 高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合

こちらのケースでは、「医師の資格を獲得するまでの勉学等について婚姻届出前から個人的な努力をしてきたことや、医師の資格を有し、婚姻後にこれを活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮して」、医師である夫とその妻の寄与割合を6:4と認定し、約1億2000万の限度で妻への分与を認めました。

Q. 経営している会社が上場しましたが、上場による株価上昇分も財産分与の対象となりますか?

A.
株式の売価益は、財産分与の対象となり得ますが、夫婦の一方の努力で上場させた事情などを考慮してもらえる可能性があります。以下のケースでは、共有財産約110億円のうち、約5%(10億円)の限度でしか財産分与を認めませんでした。株式取引等の特殊な能力・努力が必要なものについては、しっかりと裁判で主張することが重要です。

上場企業経営者の特質を考慮して2分の1ルールの適用を否定したケース
(東京地裁平成15年9月26日判決)

主婦である妻が、東証一部上場企業経営者である夫に対して、共有財産(約220億円)の半額(約110億円)を請求したところ、裁判所は、婚姻関係の破綻理由が原告(妻)側にあったことに加えて、「共有財産の原資はほとんどが原告の特有財産であったこと、その運用、管理に携わったのも原告であること、被告が、具体的に、共有財産の取得に寄与したり、A社の経営に直接的、具体的に寄与し、特有財産の維持に協力した場面を認めるに足りる証拠はないことからすると、被告が原告の共有財産の形成や特有財産の維持に寄与した割合は必ずしも高いと言い難い。」として、共有財産の5%(10億円)の限度でしか財産分与を認めませんでした

Q. 自分の経営する会社の役員に婚姻相手を就任させていた場合、株価上昇分も財産分与の対象となりますか?

財産として株式が含まれることが多い資産家にとって、株価の騰落と財産分与の関係は大きな関心事

A.
会社設立の時期や役員報酬の有無・金額などの事情により、財産分与の対象となる場合があります。

夫の会社に取締役として加わっていた妻が、中国人富裕層との人脈を利用して新規顧客の獲得を行うなど株式価値増加に貢献したことを根拠として、株価上昇分の2分の1を請求したケース
(東京家裁平成29年2月28日判決)

裁判所は、

  • 会社の設立が婚姻前であったこと
  • 設立当時から夫が一貫して株式を保有していたこと
  • 妻に業務の対価(報酬)が支払われていたこと

以上を考慮して、株式を夫の特有財産であると認定し、妻の請求を認めませんでした。

Q. 婚姻後に取得した株式の売却益も財産分与の対象となりますか?

A.
婚姻後に取得した株式も、取得・売却の経緯により、特有財産と認められる可能性があります。

婚姻後に取得した株式の売却益の半額を請求されたケース
(東京家裁平成29年2月28日判決)

裁判所は、

  • 株式取得時の資産価値が乏しかったこと
  • 株式の追加購入が別居後であったこと
  • 売却益発生の原因が、一方の交渉・努力によるものであったこと

以上を考慮して、一方の特有財産であるとして請求を認めませんでした

Q. 財産分与のトラブルを未然に防ぐ方法はありませんか?

A.
婚姻前に夫婦財産契約(民法756条)を締結することで、財産の所有者を決定することが可能です。

夫婦財産契約は、婚姻届を提出する前に締結し、その旨の登記を行う必要がありますが、特定の財産を単独所有としたり、財産分与の方法や割合などを決めておいたり、生活費の負担者や負担割合を決めておくなど、夫婦間の財産に関して細かく取り決めることが可能です。

資産が多いご夫婦の場合、一般的なご夫婦と比較して、契約内容が複雑となります。記載漏れなどがあった場合、契約が無効と判断されたり、かえって紛争を泥沼化させるリスクがあります。夫婦財産契約をご検討されている場合は、豊富な経験とノウハウを持った弁護士へのご相談をおすすめします。
 
 


 
 
今回は、離婚問題の中から「財産分与」に焦点をあててお話しさせていただきました。財産分与は夫婦関係の”経済的な”清算という意味で非常に重要な問題ですが、スムーズに話し合いを終えることは”精神的”な清算にも繋がります。

岩崎総合法律事務所では、財産分与に限らず、慰謝料、年金分割、養育費、親権・監護権、面会交渉権、不倫(不貞行為)などの離婚問題を多く取り扱っております。感情の問題へのケアはもちろんのこと、時間的なコストも含めた費用対効果を大切にし、依頼者にとって最善の解決となり、新しい人生のスタートが切れるようにサポートさせていただきます。

また、岩崎総合法律事務所では、一般的なケースに加えて、資産が多いご夫婦や、スポーツ選手、医師などの特別な技能・資格をお持ちのケースなどに関して、裁判例・審判例を随時収集・分析しておりますので、ご職業、ご資産に応じた主張を行い、お客様の権利をしっかりとお守ります。

初回のご相談は30分間無料ですので、少しでもお困りの際にはお気軽にご相談ください

※ 超過時間、平日日中(10時~18時)以外の曜日・時間帯での初回相談、再相談は、30分ごとに5,400円(うち消費税額400円)の法律相談料をいただいております。


 
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