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2022年4月10日(日曜日)
【株式報酬】報酬類型選択の視点

岩崎総合法律事務所では、上場企業・スタートアップのお客様に、ストック・オプション(SO)、リストリクテッド・ストック(RS)、パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)など、株式報酬制度の設計・発行に係るサポートをします。
発行や運用に係る法務だけでなく、報酬委員や外部アドバイザーとしてサポートすることも可能です。
以下では株式報酬を巡りよく質問いただく事項を簡単に取り上げています。

報酬類型選択の視点

Q: 報酬戦略を見直し、報酬類型の追加変更を検討しています。しかし、さまざまな報酬類型があり、設計方法も様々あるため複雑に感じています。どのように検討すればよいのでしょうか。

A: 経営戦略を特定し、これを実行するためのインセンティブ付けに資する報酬制度・条件や報酬構成比率を検討するとともに、報酬水準等については競合他社の状況など外的環境も踏まえて検討します。

報酬設計の重要性

役員の報酬は、会社の経営において重要な役割を担っています。
意思決定等会社において重要な役割を担う役員が、どのようにリスクテイクし、どのように積極的に活動するかについて、報酬の設計や内容が重大な影響を与えるからです。

経営戦略

報酬制度の設計は、経営戦略の成功を報酬面から支えるためのものである必要があり、具体的には、事業の成功に必要な人材を獲得してつなぎとめ、在籍期間中の経営戦略の成功のために高いコミットメントを期待できる設計にする必要があります。
このため、出発点は、経営戦略をどのように考えるかとなります。

経営指標(KPI)

経営戦略を踏まえて具体的な目標となる経営指標(KPI)を設定します。投資家の視点と経営者がエネルギーをもって取り組むための視点とは必ずしも一致しないこともあるため、双方の視点に配慮した複数のKPIを検討し、バランスの取れた十分なKPIを検討します。

報酬体系

設定した経営指標を実現するためにどのような報酬体系がよいのかを検討します。現物株式、ユニット、ストックオプション、株式交付信託等のどのような報酬類型を用いるかということです。いずれの類型にも長短がありますが、インセンティブの機能を発揮するために最適なものがどれかという視点で検討することが重要です。特に、業績連動の有無、給付内容は株式か金銭か、交付時期(評価期間)、業績条件の有無などの検討が重要です。
それぞれの要素に関する特徴を整理すると以下のとおりです。

◯ 長所 ー 短所
業績連動の有無 なし(固定報酬) ◯ 適切なリスクテイクとして機能する(近視眼的な業績向上を志向しない等)
◯ 優秀人材の採用やリテンションに利点
ー リスクテイクするモチベーションが弱くなる(必要以上に保守的になる等)
あり(業績連動報酬) ◯ 報酬戦略から設定した経営指標の達成のためのインセンティブとして機能させることができる ー 給付条件達成のために近視眼的な経営をする恐れがある
給付内容 金銭 ◯ 優秀人材の採用やリテンションに利点
◯ 株式の希薄化が生じない点では投資家の理解が得られやすい。
ー 給付後はインセンティブがなくなる
ー 会社に資金負担が生じる
ー 開示情報上において、役員陣の持株比率を記載する関係上、インセンティブとして持株比率に反映されないため、対投資家対応として適切でない場合がある。
株式(新株予約権含む) ◯ 株主としての目線を共有できる
◯ 給付後もインセンティブとして機能する
ー 株式の希薄化が生じる点では投資家の理解が得られにくい
ー インサイダー規制の考慮が必要
ー 会社法上の発行手続、金商法上の手続が必要
ー フルバリュー型のものについては納税資金確保の問題が生じる
交付時期(評価期間) 短期 ◯ 目標を意識しやすく、インセンティブとして機能させやすい ー 給付条件達成のために近視眼的な経営をする恐れがある
長期 ◯ 報酬戦略から中長期的な視点で設定した経営指標の達成のためのインセンティブとして機能させることができる ー 目標が意識しにくい場合にはインセンティブとして機能させにくくなる

報酬水準の検討にあたっては、役員報酬サーベイなどの情報データベースを利用しながら競合他社の状況などを踏まえて検討していきます。

報酬構成比率の調整にあたっては、投資家からは一般に業績連動報酬の比率が多い方が好まれる傾向にありますが、生活給である固定報酬が少なすぎるとリスクテイクが不適切になる可能性があるなど弊害もありますので、適切なバランスを会社の個別事情を踏まえて検討します。また、給付内容についても、事業の成功に必要な人材を獲得してつなぎとめ、在籍期間中の経営戦略の成功のために高いコミットメントを期待するにふさわしいのはどちらかを会社の個別事情を踏まえて検討します。
その他選択した報酬類型の内容について、業績連動報酬であれば連動指標や連動方法、在籍条件、継続保有条件、行使期間等の個別条件を会社の個別事情を踏まえて設計します。

 
 

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著者 岩崎 隼人
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