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財産分与に関するスタートアップ(ベンチャー)企業オーナーや、シリアルアントレプレナー(連続起業家)(以下、単に「スタートアップ企業オーナー」といいます。)特有の問題・リスクとして、以下の点が挙げられます。
▼スタートアップ企業オーナー特有の問題・リスク
①額面上の財産規模が大きかったとしても、財産のほとんどは自社株でありキャッシュがほとんど無い。
②財産分与として自社株を相手方に渡すことができない(資本政策に支障が生じるほか、株主間契約等で譲渡が制限されているケースが多いため。)。
③ある時点で自社株に財産的価値があったとしても、その後どうなるか分からない(財産的価値が大きく下落する可能性がある)。
岩崎総合法律事務所では、上記の点に配慮したスタートアップ企業オーナーのための婚前契約の雛形をご用意しています。
細かな条件等については個別事情に応じて調整する必要がありますが、ベンチャー・スタートアップ企業オーナーの方が重視すべき点を網羅したものとなります。
これから入籍する予定の皆様をはじめ、投資先が入籍を予定している場合の投資元(ベンチャーキャピタル)や取引先の皆様で婚前契約にご関心をお持ちの方はお問い合わせください。
以下、上記雛形の一部について、ベンチャー・スタートアップ企業オーナーの特有の問題・リスクを踏まえてQ&A形式でご説明していきます。雛形の利用のご検討及び実際にご利用される際にぜひご活用ください。
※婚前契約(夫婦財産契約)全般についてはこちらのコラムをご覧ください。
※経営者・社長が離婚する場合の自社株の問題についてはこちらのコラムでも紹介していますのでご覧ください。
弊事務所では、富裕層法務サービス Legal Prime® を通じ、資産家、投資家、会社経営者などの資産・収入の多いお客様に対し多様なサポートを提供してまいりました。
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婚姻前から有する財産は、財産分与の対象にならないのが原則です(財産分与の対象にならない財産のことを「特有財産」といいます。)。そのため、婚姻後に設立した会社の出資の原資が婚姻前から有する財産である場合は、特有財産として扱われることが原則です。
もっとも、会社株式については、通常の資産とは異なり、その後の会社経営者、社長自身の経営努力によって価値が膨大に膨れ上がる可能性のあるものであり、純粋な資産と性質が異なる点があります。このため、原則どおりの判断がされるかについては個別事情次第で判断される可能性があります。
下記【条項例】のとおり定めることにより、特有財産の範囲を明確にするとともに、特有財産と共有財産が混在しないように運用することで、特有財産性を維持できる可能性が高まります。
※ただし、このように定めたとしても、争いが生じた時点で裁判所が異なる判断基準を用いたり、財産の維持・発展に対する相手方の貢献といった事情を踏まえて異なる判断を下したりする可能性はありますので、契約書に盛り込む際は慎重な判断が必要となります。
条項例
「甲及び乙の特有財産は、それぞれ次の財産であることを相互に確認する。
⑴・・・
⑵・・・
⑶自らが有する本項各号の財産を原資として取得した金銭、預貯金、不動産(投資用不動産だけでなく、婚姻期間中の居住用不動産を含む。)、動産、信託財産、有価証券(投資先有価証券に限らず、自己が運営する法人の持分、株式及び自己の資産管理会社の持分、株式を含む。)、みなし有価証券、暗号資産、ゴルフ会員権その他一切の財産(以下「代替物」という。なお、疑義を避けるため付言すると、前各号の財産を原資として取得した財産を更に原資として取得した財産等、過去に遡った場合にその財産の取得の原資となったものが、前各号の財産である場合には、これら一切の財産は代替物に包含されるものとする。)。一例を具体的に示すと、婚姻日前に保有していた資産を原資にして設立ないし取得する法人に係る持分 、株式は特有財産とし、これら法人に係る持分、株式はその価値の上昇分を含め、財産分与の対象とはならないものとする。」
経営者・社長が離婚する場合の自社株の問題についてはこちらのコラムでも紹介していますが、会社株式については、その分与の方法について注意しなければいけません。
特に経営との関係で、どのような影響が生じるかを整理することが重要です(これは経営者でない側の配偶者にとっても重要なことです)。
分与の方法には、清算してする方法と現物のまま分与する方法があります。
清算してする方法とは、対象財産の帰属はそのまま変動させずに清算金の支払をもって解決する方法であり、これが原則となります。
したがって、この方法で解決できる場合、株式を処分する訳ではありませんので、経営権に支障は生じないのが原則です。しかし、清算金を用意することが難しい場合は別途の検討が必要となり、場合によっては処分せざるを得なくなります。
下記【条項例】のとおり、エグジットまでに要する一定期間の間、当該株式の処分を保留することが考えられます。このような設計を行うことにより、意図しない時期に自社株を処分することを回避できる可能性が高まります。
※ただし、このように定めたとしても、争いが生じた時点で裁判所が異なる判断基準を用いたり、共有財産全体に占める自社株の割合等といった事情を踏まえて異なる判断を下したりする可能性はありますので、契約書に盛り込む際は慎重な判断が必要となります。
条項例
「共有財産の中に直ちに換価又は価額賠償が困難であると甲が判断する株式等の財産(婚姻関係終了時より後の時点においてIPO、M&A等が予定されている非上場株式を含むがこれらに限られない。以下「エグジット前の株式等」という。)がある場合、当該エグジット前の株式等ないしその評価額相当額に限り、婚姻関係解消の協議が開始した日の翌日から5年間、財産分与にかかる支払いの履行を保留することができるものとする。」
現在の裁判実務においては、分割時(裁判によるときは口頭弁論終結時又は審判時)が評価の基準時となるのが原則です。
例えば下記【条項例】のように定めることにより、評価の基準時を調整できる可能性があります。
※ただし、このように定めたとしても、争いが生じた時点で裁判所が異なる判断基準を用いたり、共有財産全体に占める自社株の割合等といった事情を踏まえて異なる判断を下したりする可能性はありますので、契約書に盛り込む際は慎重な判断が必要となります。
条項例
「財産分与における対象財産の評価の基準時は婚姻関係解消の協議が開始した日とする。」
非上場の株式の客観的価値を評価する方法はいくつかあります。
その分類として評価のアプローチに着目したものがあり、これによると概ね以下の3つに大別されます。(株式の評価の詳細についてはこちらのコラムでご紹介しているのでご覧ください。)
① インカム・アプローチ:期待される利益またはキャッシュフローに基づいて評価する方法
② マーケット・アプローチ:上場している同業他社や類似取引事例などと比較することで相対的に価値を評価する方法
③ ネットアセット・アプローチ:貸借対照表上の純資産から価値を評価する方法
下記【条項例】のとおり定めることにより調整できる可能性があります。
※ただし、このように定めたとしても、争いが生じた時点で裁判所が異なる判断基準を用いたり、共有財産全体に占める自社株の割合等といった事情を踏まえて異なる判断を下したりする可能性はありますので、契約書に盛り込む際は慎重な判断が必要となります。
条項例
「非上場株式その他法人持分、新株予約権等を評価する場合は、完全希釈化ベース(評価時点における発行会社の潜在株式の全て(発行会社が保有するものを除く)について、当該時点で発行会社の普通株式に転換され又はかかる権利の行使によって発行会社の普通株式が取得されたものと仮定した状態をいう。)をもって評価するものとする。また、評価の基準時は婚姻関係解消の協議が開始した日とする。」
第三者名義の財産については、当該財産が形成された経緯(株式の場合は取得原資を誰が支出したのか、夫婦の一方が支出したものであるとして、それが贈与の趣旨で行われたものなのか等)を踏まえて、財産分与の対象になるか否か判断されることになります。
下記【条項例】のとおり、子ども名義の財産を財産分与の対象から除外する旨の規定を盛り込むことにより、当該財産については財産分与の対象から除外できる可能性が高まります。
※ただし、このように定めたとしても、争いが生じた時点で裁判所が異なる判断基準を用いたり、子ども名義の財産の規模や、当該取り決めの財産分与全体に与えるインパクト等を踏まえて異なる判断を下したりする可能性はありますので、契約書に盛り込む際は慎重な判断が必要となります。
条項例
「婚姻してから別居(仕事上の必要に基づくものなど、婚姻関係が円満な状態で行われるものは除く。以下同じ。)または離婚のいずれか早い日までの間に形成・取得した財産(○条第1項に定める財産、及び甲乙間の子ども名義の一切の財産を除く。以下同じ。)は共有財産とする。」
こちらのコラムでも紹介していますが、以下のような内容が含まれると、契約自体が無効と判断されるおそれがありますので注意が必要です。
・同居・扶助の義務を否定する条項
・著しく男女不平等を是認する条項
・日常家事債務の連帯責任を否定する条項
・一方の申し出により自由に離婚できる旨の条項
・財産分与額を不当に低く定める条項
また、無効とまでは判断されなかったとしても、裁判所が婚前契約(夫婦財産契約)を作成した時点とは異なる判断基準を用いて判断したり、問題となる規定が与えるインパクト等を踏まえて異なる判断を下したりする可能性はあります。そのため、契約書に盛り込む際は慎重な判断が必要となります。
さらに、婚前契約(夫婦財産契約)に限らずあらゆる契約にいえることですが、締結した契約書に期待通りの効果を求めるためには、契約書の内容を正しく理解し、契約書の内容に沿って運用しなければいけません。
この意味で、婚前契約(夫婦財産契約)は現実的に実践できる運用かどうかも検討の上で作成する必要がありますし、契約締結後も契約書に沿って正しく運用しなければいけません。
スタートアップ企業専用 婚前契約(夫婦財産契約)雛形
資産家夫婦の財産分与トラブルを防ぐ「婚前契約」(夫婦財産契約)という選択
婚前契約ではない「婚後契約」という選択肢
資産家カップルの事実婚・パートナーシップ ~あえて結婚しないという選択~
起業家100名に婚前契約のセミナーを行いました
今回は、ベンチャー・スタートアップ企業オーナー、シリアルアントレプレナー(連続起業家)に焦点をあてた婚前契約(夫婦財産契約)の雛形についてお話しさせていただきました。
婚前契約(夫婦財産契約)には離婚後の取り決めだけでなく、婚姻中の生活や、一方が先立たれた場合のケアについてなど、お互いを想い合った様々な約束を盛り込むことが可能であり、安心して素敵な結婚生活を送るために重要な役割を果たします。
これから結婚されるお客様にとって最善のスタートが切れるようにサポートさせていただきます。婚前契約(夫婦財産契約)の件に限らず、初回のご相談は30分間無料ですので、お気軽にご相談ください。
※ ご相談の内容や、ご相談の態様・時間帯等によっては、あらかじめご案内の上、別途法律相談料をいただくことがございます。
岩崎総合法律事務所には、富裕層向けコンサルタント資格であるプライベートバンカーライセンスを保有する弁護士が所属しており、これまで様々な富裕層、資産家の方を対象にリーガルサービスを提供しています。婚前契約(夫婦財産契約)の作成についても多くの実績があります。
富裕層と一言で言っても、夫婦それぞれの婚前財産、収入状況、資産家としての特性(上場・非上場企業オーナー、医師などのプロフェッショナル、不動産オーナー、エンジェル投資家等)は様々です。ご相談者様の特性を踏まえ、資産保全と今後の健全な夫婦生活のために最適なソリューションをご提案させていただきます。
また、婚前契約(夫婦財産契約)に限らずあらゆる契約にいえることですが、締結した契約書に期待通りの効果を求めるためには、契約書の内容を正しく理解し、契約書の内容に沿って運用しなければいけません。
岩崎総合法律事務所が提供する富裕層法務サービス Legal Prime® では、設計から運用、そして万一の際も見据えて継続的なフォローアップを通して婚前契約(夫婦財産契約)を真に意味のあるものとします。