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2024年4月30日(火曜日)
医師ではない皆様が医療機関を経営する方法と注意点

岩崎総合法律事務所は、医師・医者、資産家、高額所得者などの「富裕層」と呼ばれるお客様に対する法務サービス Legal Prime® を提供してきた経験の中で、医療機関の経営のサポートも行ってきました。

本コラムでは、医師ではない富裕層の皆様が医療機関を経営するにあたっての注意点をQ&A形式で解説します。

岩崎総合法律事務所では、医師、クリニック、病院、医療法人、大学病院等の医療機関や、バイオメディカル・ヘルスケア事業を営む会社向けに、法律サービスを提供してきました
これらの知見は、医療機関経営のサポートにあたっても、生かされるものです。
医師イメージ

取扱業務:医療・バイオメディカル・ヘルスケア法務

医療機関を経営しようとする方やお悩みの方は、当事務所までお問い合わせいただくことをお勧めいたします。

 

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目次

 

Q1 利益を得ようと思って、医療機関を経営しようとしてはいけませんか?非営利性の徹底とは?

医療機関を経営する目的のひとつとして、社会貢献があります。
医師でない方であっても、地域医療のために医療機関経営を考える方も多数いらっしゃいます。

中には利益を追求したいという方もいます。
この点、営利目的で医療機関を経営することは禁止されています(医療法7条7項)。これは経営主体が利益追求を意図して医業をを行ってはならないということを意味します(なお、会計上の利益、剰余金までを否定するものではありません)。また、医療法人については、剰余金の配当を行うことが禁止されています(同法54条)。
他にも、医療機関の非営利性を徹底するために、具体的には、次の点が求められています。
・医療機関の開設主体が営利を目的とする法人でないこと
・医療機関の運営上生じる剰余金を役職員や第三者に配分しないこと
・医療法人の場合は、法令により認められているものを除き、収益事業を経営していないこと
・医療法人以外の法人が開設した医療機関について、解散した場合の残余財産が帰属すべき者に関する規定があらかじめ定款等で定められており、かつ、その者が、出資者又はこれに準ずる者以外の者であること
((医療法7条7項、「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」平成5年2月3日総第5号・指第9号、「医療法人以外の法人による医療機関の開設者の非営利性の確認について」平成19年3月30日医政総発第0330002号等)

上記の点を満たしていない場合には、医療機関開設の許可を得ることは困難となります。
また、開設後に、行政機関から、営利目的で経営しているとの疑義をもたれた場合には、立入検査が実施される可能性があります。

以上のとおり、医療機関は、非営利性を徹底することが求められています。

Q2 そうはいっても剰余金も溜まるし、結果的に利益が得られることもあるのではないですか?

非営利性の徹底は上記のとおりですが、しかし結果的には、利益が発生しているケースもあります。例えば、理事に対する報酬の支払い(なお、後述のとおり、理事全員に対する報酬総額が、社員総会で決議された理事全員に対する報酬総額を越えない限り、一人の理事に対する報酬の支払額に上限はありません。)、医療機関のM&Aによる売却代金から、利益を得るといったケースです。

Q3 そもそも医師でなくても、医療機関の経営は可能なのですか。

クリニック

医師でなくても、医療機関の経営は可能です。
医療機関を経営する方法には、医療法人により運営する方法のほか、一般社団法人により運営する方法があります。

Q4 医師でない方が医療機関の経営を始めようとする際には、一般社団法人と医療法人、どちらが良いのでしょうか。

医療法人の場合は、理事や社員として医療機関の運営に関与することが可能です。ただし、医療法人では、理事長が医師でなければならず、医師でない方が理事長の権限を得ることはできません。理事長には、医療法人の業務と認められる一切の事項について、裁判上・裁判外において法人を代表する包括的な権限があります。こうした理事長の権限を得られず、理事等の地位を有するのみでは、医療法人の業務の大部分を直接行うことができず、その結果、医療法人の運営に関与する意義も小さくなりやすいです。
主に以上の理由から、医師でない方が医療機関の経営を始めようとする際には、医療法人は採用されにくい状況です。

一方、一般社団法人では、医師でない方も理事長になることができ、理事長として医療機関の経営に関わることができます。

Q5 医師でない者にとって、医療法人と一般社団法人による運営のそれぞれのメリット・デメリットはどのようなものでしょうか。

医療法人による運営、一般社団法人による運営のそれぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。

〈医療法人による医療機関運営のメリット・デメリット〉
メリット
・医療法人の設立後であれば、医療機関開設にあたっての保健所等の許可が得られやすい(ただし、下記のデメリットのとおり、医療法人の設立の認可にあたっては、都道府県知事による厳格な審査を通過する必要があります。)。

デメリット
・医療法人設立にあたって、都道府県知事の認可が必要である。
・理事長が医師である必要がある(理事長の権限を得られないため、医療法人の業務の大部分を直接行うことができず、その結果、医療法人の運営に関与しにくくなる)。
・医療法人は行える事業範囲に医療法上の大幅な制限がある。認定を受け社会医療法人となった場合を除き、例えば、不動産の賃貸、ボランティア事業、フィットネスクラブの運営、保健機能食品の販売などといった業務を行うことはできません。

〈一般社団法人による医療機関運営のメリット・デメリット〉
メリット
・一般社団法人は設立にあたって都道府県知事の認可が不要であり、法務局に登記すればいつでも設立が可能となっており、設立が容易に行える。
・理事長が医師である必要はない。
・一般社団法人の事業範囲に特別な制限はない。

デメリット
・前例が少ないため、保健所によっては、審査にあたって最初から断られたり、医療機関開設の許可に時間を要する場合がある。

記載のとおり、一般社団法人が医療機関を開設するにあたっては、保健所の許可が必要となり、保健所で厳しい審査が行われることもよくあります。
保健所の審査を通過するためには、一般社団法人の非営利性を徹底する(非営利性を徹底するために必要な点は、Q1に記載したとおりです。)、医療法人ではなく一般社団法人で医療機関を開設したい理由(例えば、特定の分野に特化した医療をより手軽にするため医師でない方自身が医療機関を開設して経営に関与したいといった理由や、診療業務に加えてボランティア事業も行いたいといった理由が考えられます。)を十分に伝えるなど、いくつか重要なポイントを押さえておくことが必要となります。
ケースバイケースの判断が必要となることも多々ありますので、一般社団法人による医療機関の開設を検討している場合には、まずは当事務所にご相談ください。

Q6 医療機関を立ち上げたその後に注意すべきことはありますか。例えば理事長報酬はどのように設定すれば良いのでしょうか。

医師でない方が、例えば医療法人の理事や一般社団法人の理事長となり、報酬をいただくにあたっては、理事全員に対する報酬総額が、社員総会で決議された理事全員に対する報酬総額を超えないように注意しましょう。
この点以外には、理事への報酬の支払いで注意すべき点は特にありません(ただし、医療法人が、社会医療法人や特定医療法人ではある場合は除きます。)。
もっとも、適正な額の役員報酬ではない場合には税務上損金に算入されないといったリスクがある点にご注意ください。

報酬以外の点については、上記のとおり、医療法人では、理事長が医師であることが必須とされています。また、一般社団法人であっても、運営する診療所等では医師が必要となります。
万が一、現時点で医療法人の理事長となっている医師や一般社団法人の運営する診療所で働く医師がいなくなった場合でも、組織内の別の医師で対応できるような体制作りを目指しましょう。

Q7 医療法人のM&Aはどのような方法により行われますか。売却価格はどのように決定されますか。

出資持分のある医療法人では、多くの場合、出資持分の譲渡によりM&Aが行われます。
他方で、持分なし医療法人の場合には、理事の交代と退職する理事への退職金の支払いという方法によりM&Aが行われます。

売却価格は医療法人の純資産が大きく影響しますが、その他にも医業で発生している利益、従業員への未払残業代の有無などを考慮し、売却価格が決定されます。

Q8 そのほか医療法人のM&Aで注意することはありますか。

従業員への未払残業代は多額となる傾向にあり、未払残業代の存在はM&Aにあたって大きな障壁となります。いずれM&Aを行う予定がある場合には特に、未払残業代を発生させないように注意しましょう。
また、医療機関の患者は特定の医師に診察してもらうために通院している場合がほとんどです。医療法人のM&Aに伴い、特定の医師がやめる場合には、この医師に診察してもらっていた患者が通院をやめることもよくあります。
病院を運営する医療法人のM&Aの場合には比較的容易にM&A先が見つかる傾向にありますが、他方で、クリニックを運営する医療法人の場合、地域によってはM&A先を見つけることが困難なケースもあります(東京近辺以外ではM&A先を確保することが困難な傾向にあるようです。)。
将来、M&Aを行うことを検討しているのであれば、M&Aを実施したい時期より3年から5年ほど早い段階から医療法人内の体制見直し、M&A後にも在籍し続ける医師の確保、M&A先の探索などを行うことをおすすめします。

 
 


 
 

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