ファンドオーナーやファンド運営者(General Partner、GP)が離婚する場合、一般の財産分与とは異なり、ファンド持分や報酬の取り扱い、キャッシュフローの評価など、極めて複雑な問題が生じます。
特に、ファンド持分の譲渡制限や成功報酬、キャリードインタレスト等の報酬の扱いは争点になりやすく、慎重な対応が求められます。
そこで今回のコラムでは、ファンド関連の離婚問題について、財産分与の観点から詳しく解説します。
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【ファンド投資家について】
【ファンド運営者について】
【ファンド投資家・ファンド運営者共通】

一般的に以下の流れで組成・運営されます。
ファンドの法的構造としては、LPS(投資事業有限責任組合)、LLP(有限責任事業組合)、民法上の組合など、投資目的に応じた形態が採用されます。
LPSは、GP(無限責任組合員)が主導し、投資家であるLP(有限責任組合員)からの出資を募ることで設立されます。
この段階では、ファンド契約の内容が詳細に決められ、投資方針や報酬の条件、持分の譲渡制限などが規定されます。
ファンドに対する出資の方式としては、一括で出資する方式、ファンド運営者から要請を受けた際に出資するキャピタル・コール方式があります。
ファンドの投資期間中、ファンド運営者は投資戦略に基づき、複数の投資対象を選定して資金を投入します。
通常、投資先企業のバリュエーションやエグジット戦略を慎重に計画し、リターンの最大化を図ります。
追加投資やエグジット(M&A・IPO)に向けた戦略を立てます。
ファンド運営者は管理報酬や成功報酬、キャリードインタレスト等の報酬を受領します。
ファンドオーナーには投資有価証券の売却状況等に応じてファンド財産が分配されます。
ファンド運営者の報酬等(管理報酬、成功報酬、キャリードインタレストなど)についてはQ7をご覧ください。
ファンドの存続期間が終了すると、投資有価証券等について売却・上場を通じて得た利益がLPへ分配されます。
一般的に、ファンド運営者も成功報酬やキャリードインタレストとして利益の一部を取得することになります。
ファンドオーナー、ファンド運営者、いずれも様々な名目で報酬や分配金等を受領することになります。これらの支払いが一つの口座でまとめて管理されている場合もありますが、例えばファンド運営者として受領する管理報酬はA口座で管理し、成功報酬その他の支払いはB口座で管理するといったケースがあります。この場合、財産分与を求める側としては、把握している口座ですべてか(漏れがないか)留意する必要があります。一方、財産分与する側(ファンド運営者側)としては、これらの口座の中で特有財産(財産分与の対象とならない財産)と混在していないか(徹底した分離管理ができているか)よく確認する必要があります。
財産分与の観点からおさえておくべきポイントは以下のとおりです。
ファンドオーナーの持分は流動性が低く、また、譲渡制限が付けられている場合が多いため、評価方法が問題となります。
利益分配の時期によっては、実際に分配を受ける前に所得が認識され、実際のキャッシュフローとは異なるタイミングで投資家に課税が発生する場合があります。
そのため、利益分配と課税のタイミングのズレが財産分与にどのような影響を与えるのかが問題となります。
過去の分配金だけでなく、確定しているものの支配時期が到来していない分配金や将来の分配金が財産分与の対象となるかが争点になります。
特に、財産分与の基準時点(別居時点・離婚時点)が分配金の発生時期とどのように関係するかを検討する必要があります。
ファンドに後から参加する投資家がいる場合、既存の投資家に対して手数料を支払うことがあります。
別居後に新規投資家がファンドに加入し、手数料収入が発生した場合には、財産分与の対象となる可能性があります。
手数料の詳細については、Q4をご覧ください。
ファンドには「投資期間」と「存続期間」という言葉があります。
「投資期間」は、新規に投資を行う期間で、「出資拘束期間」ともいわれます。
「存続期間」は、まさにファンドが存続する期間であり、期間満了をもって清算されることになります。
ファンド持分や投資家としての地位については、以下のように基本的に譲渡できないように定められています 。
【条項例】
「組合員は、組合財産に対する持分について、裁判上及び裁判外の事由の如何を問わず、譲渡、質入れ、担保権の設定その他一切の処分をすることができない。(後略)」
「有限責任組合員は、無限責任組合員の書面による承諾がある場合を除き、その組合員たる地位について、裁判上及び裁判外の事由の如何を問わず、譲渡、質入れ、担保権設定その他一切の処分をすることができない。」
(出典:経産省モデルLP A 34条1項及び35条1項)
そのため、存続期間中に財産分与として持分や地位を処分することはできません。
もっとも、存続期間中の譲渡が禁止されているからといって、直ちに財産分与の対象から除外される訳ではありません。
婚姻後の出資である場合には、持分や地位も財産分与の対象に含まれるのが原則となります。
ただし、評価にあたっては、存続期間の長さや清算時に見込まれる利益などが考慮されると考えられます。
後から参加する投資家は、いわば既存の投資家が負ったリスクの上に後追いで投資することになります。
そのため、後から参加する投資家について、以下のように一定の手数料を支払うよう定めておくことがあります。
【条項例】
「追加出資組合員は、それぞれ無限責任組合員が書面により指定する日(以下「追加クロージング日」という。)までに、次の各号に規定する金額の合計額を組合口座に振込送金して払い込むものとする。(中略)
① ⒜ポートフォリオ投資に対応して追加クロージング日までになされた出資につき、本条第9項に従って効力発生日から組合員とされることにより当該追加出資組合員が本条第3項又は第4項に従って按分して負担すべきであった額の出資金(中略)及び⒝その金額に、当該ポートフォリオ投資がなされた時にかかる出資を行っていればそれぞれ払込みのなされるべきであった日の翌日から追加クロージング日までの期間について年利[ ]%(年365日の日割り計算とする。)でそれぞれ算出された利息金の合計額に相当する追加出資手数料を合計した額
② (以下略)」
(出典:経産省モデルLP A 8条6項)
この手数料は、ファンドやファンド運営者ではなく、ファンド投資家に支払われることが一般的です。
手数料の発生時期が別居前であった場合には、持分や分配金請求権とは別に財産分与の対象に含まれる可能性があります。
以下のような場合に分配金を返還しなければならないと定められていることが一般的です。
・表明保証違反などの義務違反により、ファンドから買主に対して損害賠償を行う場合
・価格調整条項に基づき、ファンドから買主に対して売買代金の一部を返還する場合
ただし、返還については請求期限や金額に制限が設けられていることが多いです。
【LPクローバックに関する条項例】
「無限責任組合員は、次条第2項に基づく補償に必要な限度で、[キャリード・インタレストの返還を行った/特別有限責任組合員において既に分配を受けたキャリード・インタレストの返還を行わせた]うえ、これにより填補されない額について、有限責任組合員(脱退した有限責任組合員を含む。本項及び次項において同じ。)に対し、返還されたキャリード・インタレストの額も勘案した上で合理的に算定される一定の割合(かかる算定根拠は有限責任組合員に予め通知されなければならない。)に従って、当該有限責任組合員が第29条第2項及び第3項に規定する分配により本組合から現実に受け渡された組合財産の総額に達するまで、かかる組合財産の返還を請求することができる。組合員により返還された組合財産は、その返還がなされた時点以降において、第29条第2項又は第3項
に規定する分配がなされなかったものとして扱う。」
(出典:経産省モデルLP A 21条3項)
通常は返還された金額を考慮、すなわち共有財産から控除した上で財産分与を行うことになると考えられます。
分配金は以下3つの場合に発生します。
①:投資証券等について売却などの処分が行われ、その対価として金銭を受領した場合
②:投資証券等に関して配当、利息などを受領した場合
③:①②以外の理由で組合財産に関して収益が発生しこれを受領した場合
分配金の支払い時期については、金額の大きなものについては都度払いとしたり、一定の期間(半期ごとや1年度ごと)で支払うよう定めるケースが多いです。以下条項例となります。
【条項例】
「無限責任組合員は、次条第1項に規定する制限に抵触しない範囲において、次の各号に規定するところに従い、無限責任組合員がその裁量により決定する時において分配額を確定し、組合員等に対しそれぞれ金銭による組合財産の分配を行うものとする。[但し、無限責任組合員は、その裁量で、組合費用、管理報酬、組合債務及び公租公課の支払い等のために必要な場合、本条に基づく分配を留保することができる。]
① 無限責任組合員は、処分収益を受領したときは、その受領後[ ]ヶ月以内の無限責任組合員がその裁量により指定する日において、当該処分収益に係るポートフォリオ投資に係る対象組合員等に対し、当該処分収益から、処分等に要した諸費用及び公租公課並びに当該処分等の時において支払期限が到来していた当該ポートフォリオ投資に係る組合費用の合計額を控除した上、当該各対象組合員等の対象持分割合(脱退組合員については当該脱退組合員の脱退当時を基準とする。)に応じて按分した割合により分配するものとする。
② 無限責任組合員は、その他投資収益を受領したときは、これを受領した日の属する事業年度の末日から[ ]ヶ月以内の無限責任組合員がその裁量により指定する日において、当該ポートフォリオ投資に係る対象組合員等に対し、当該その他投資収益から、当該受領に要した諸費用及び公租公課並びに当該受領の時において支払期限が到来している当該ポートフォリオ投資に係る組合費用の合計額を控除した上、当該各対象組合員等の対象持分割合(脱退組合員については当該脱退組合員の脱退当時を基準とする。)に応じて按分した割合により分配するものとする。
③ 無限責任組合員は、特別収益を受領したときは、受領の都度これを分配することを要しないものとし、無限責任組合員がその裁量により指定する日において、特別収益のうち無限責任組合員がその裁量により適切と考える額に相当する金銭を、組合員についてはその持分金額、脱退組合員については当該脱退組合員の脱退当時の持分金額の各金額に応じ按分した上、分配することができるものとする。」
(出典:経産省モデルLP A 29条2項)
一方、ファンド契約においては、通常以下の定めがあり、契約に定めがある場合を除いて、組合財産について分配を求めることはできません。
【条項例】
「組合員等は、本契約に定めがある場合を除き、事由の如何を問わず、本組合の解散の前に組合財産の分配を請求することができない。」
(出典:経産省モデルLP A 29条1項)
ファンドに関して、ファンドオーナーの最終的な利益が確定するのは、ファンドの存続期間が満了し、最終的な分配が行われて以降になります。
そのため、存続期間が満了する前に財産分与の問題が生じた場合には、財産分与の対象となる範囲や評価の問題が発生します。
この場合の対応として、ファンド清算前の時点で一定額の支払いをもって合意する方法や、一定額を財産分与として支払った上でファンドの存続期間の満了を待ち、最終分配が確定した段階で分与額を再度計算して過不足を清算する方式などが考えられます。

財産分与の観点からおさえておくべきポイントは以下のとおりです。
ファンド運営者の持分は、ファンドの運営責任と密接に結びついているため、以下のように譲渡制限や処分禁止が定められていることが通常です。そのため、財産分与の際には持分の評価だけでなく、持分をどのように処理するかも問題となります。
【条項例】
「無限責任組合員は、他の組合員の全員の書面による同意がある場合を除きその組合員たる地位を譲渡することができない。」
(出典:経産省モデルLP A 35条6項)
ファンド運営者が受け取る報酬、利益には主に以下の4つがあります。条項例と併せてご紹介します。
ファンド運営に関する日常業務の対価として支払われるものです。
一定額で支給したり、出資約束金額(組合員が出資することを約した金額)や投資総額(ある時点において、組合が取得した投資証券等の取得価額の合計額)などに対する一定割合(年率2%前後が相場のようです)をもって支払われることが一般的です。
【条項例】
「無限責任組合員は、各事業年度の管理報酬として、次の各号に規定する額(年額)を、当該事業年度の期初から[ ]営業日以内に、毎年前払いで、現金にて受領するものとする。
① 最初の事業年度については、総組合員の出資約束金額の合計額の[ ]%に相当する額(年365日の日割り計算とする。)
② 第二事業年度以降投資期間の終了日が属する事業年度までについては、各事業年度につき、総組合員の出資約束金額の合計額の[ ]%に相当する額
③ 投資期間の終了日が属する事業年度の翌事業年度以降については、各事業年度につき、当該事業年度の直前の事業年度の末日における[投資残高 / 純資産額]の[ ]%に相当する額」
(出典:経産省モデルLP A 33条2項)
ファンドに収益が生じた場合の対価として支払われるものです。
収益に対する一定割合をもって支払われることが一般的です。
【条項例】
「無限責任組合員は、成功報酬として、第〇条に従い計算される金額(※収益の一定割合)を受領するものとする。ただし、投資証券等(組合が取得し又は取得する予定である株式、持分、新株予約権、指定有価証券、金銭債権、信託受益権、約束手形、預金証書若しくは動産をいい、これらに係る処分、現物配当、株式分割等によって組合が取得したもののうち金銭以外のものを含む。)を現物で分配することが組合員の利益に適うと合理的に判断する場合には、次項の定めに従い現物により受領するものとする。」
成功報酬の支払いに代えて、ファンドオーナーに対する報酬としてではなく、ファンドオーナーが保有するファンド持分の権利の実現として、ファンドの収益に対して一定割合が支払われることがあります。
【条項例】
「あるポートフォリオ投資に係る処分収益若しくはその他投資収益又は前項に規定する投資証券等の分配は、当該ポートフォリオ投資に係る各対象組合員等について、次の各号に規定する順位及び方法に従い行うものとする。
① 第一に、当該分配において前二項に基づき当該対象組合員等に対し行う分配額(現物分配の場合にはその分配時評価額を含む。)(以下「分配可能額」という。)と分配累計額の合計額が当該対象組合員等の出資履行金額の合計額と同額となるまで、当該対象組合員等に分配可能額の100%を分配する。
② 第二に、分配累計額及び分配可能額の合計額から当該対象組合員等の出資履行金額の合計額を控除した額が、当該対象組合員等の出資履行金額の合計額に[α]%を乗じた金額と同額になるまで、当該対象組合員等に分配可能額の100%を分配する。
③ 第三に、当該分配までに本項に基づき当該対象組合員等に関し[無限責任組合員 / 特別有限責任組合員]に分配されたキャリード・インタレストの総額及び当該分配において当該対象組合員等に関し同項に基づき[無限責任組合員/特別有限責任組合員]に対して分配されるキャリード・インタレストの額の合計額(以下「キャリード・インタレスト累計額」という。)が、次に規定する金額の合計額の[β]%相当額と同額となるまで、[無限責任組合員 / 特別有限責任組合員]にキャリード・インタレストとして分配可能額の[γ]%を分配し、当該対象組合員等に分配可能額の[(100-[γ])]%を分配する。
ⅰ 分配累計額及び当該分配において本項第①号から本号までに基づき当該対象組合員等に対して行われる分配額の合計額から当該対象組合員等の出資履行金額の合計額を控除した額
ⅱ キャリード・インタレスト累計額
④ 第四に、[無限責任組合員 / 特別有限責任組合員]にキャリード・インタレストとして分配可能額の[β]%を分配し、当該対象組合員等に分配可能額の[(100-[β])]%を分配する。
(出典:経産省モデルLP A 29条4項)
※上記条項例は、無限責任組合員と有限責任組合員との間で、組合持分に基づく分配を行うものとして規定しています。
無限責任組合員が投資先等から直接報酬を受け取る場合もあります。
報酬の名目については、投資先の役員に就任した場合の役員報酬のほか、アドバイザーとして関与した場合の報酬など多岐にわたります。
これらの報酬は、ファンドに関与した結果もたらされるものです。そのため、当該報酬の支払いがあった場合には、当該相当額についてファンドから支払う管理報酬を減額したり、そもそもそのような報酬を受け取ることが禁止される場合もあります。
以下のモデル契約書では、当該報酬の一定割合を管理報酬から控除することとされています。
【条項例】
「無限責任組合員は、ポートフォリオ投資又は無限責任組合員による経営若しくは技術の指導若しくは助言その他の経営支援に関連して、投資先事業者等から手数料又は報酬その他の対価(以下「控除対象手数料等」という。)を受領することができる。無限責任組合員又は特定関係者が控除対象手数料等を受領したときは、当該控除対象手数料等の[ ]%に相当する額(以下「管理報酬控除額」という。)を、直後の管理報酬の支払日に支払われるべき管理報酬から減額するものとし、当該投資先事業者等へのポートフォリオ投資に出資した各組合員は、管理報酬控除額のうち、当該ポートフォリオ投資に係る対象持分割合に応じて按分した金額につき、当該支払日に支払われるべき管理報酬の負担を免れるものとする。(後略)」
(出典:経産省モデルLP A 33条3項)
管理報酬は比較的明確に評価できますが、その他の報酬についてはファンドのパフォーマンス等によって影響を受けるため、また、対象となる期間が長期にわたるケースも多いため、基準時や評価方法等が問題となりやすいです。
別居後に確定した報酬が、どの程度財産分与の対象になるかが争点となります。
例えば、成功報酬が別居前の投資活動の成果であるのか、それとも別居後の成果であるのかなど、双方の主張が対立する場合があります。
ファンド投資家と同様、ファンド運営者についても以下のような場合に分配金を返還しなければならないと定められていることが一般的です。「GPクローバック」といわれます。
・成功報酬やキャリードインタレストが先払いで支払われた場合において、当初の見込みが外れて投資実績が悪化し、成功報酬等が過払いの状態になった場合
・適正な成功報酬額を超えて支払いを行ったことが判明した場合
【GPクローバックに関する条項例】
「本組合の清算手続における分配を行う日の時点において、各組合員等に関し、当該組合員等が出資を行ったポートフォリオ投資において[無限責任組合員/特別有限責任組合員]がキャリード・インタレストを受領していた場合で、かつ、ⅰ第29条又は本条に基づき当該時点までに当該組合員等に対して行われた組合財産の分配の額(現物分配の場合にはその分配時評価額を含む。以下本条において同じ。)の累計額(以下「清算時対象分配累計額」という。)が、当該組合員等によりなされた出資履行金額の総額及び同金額の[α]%に相当する金額の合計額(以下「清算時優先分配金額」という。)を下回るか、又はⅱ当該組合員等に関し[無限責任組合員/特別有限責任組合員]が当該時点までに受領したキャリード・インタレストの合計額(以下「清算時キャリード・インタレスト累計額」という。)が、当該組合員等に係る清算時対象分配累計額から当該組合員等の出資履行金額を控除した金額及び当該組合員等に関する清算時キャリード・インタレスト累計額の合計額の[β]%を超える場合、[無限責任組合員/特別有限責任組合員]は、(x)以下の各号に規定する金額のうちいずれか大きい金額又は(y)清算時キャリード・インタレスト累計額から当該金額に関して無限責任組合員に対して課せられる税金の額(当該者に適用される税率(複数の税率が適用される場合には、限界税率とする。)に基づいて計算する。)を控除した金額のうち、いずれか小さい金額に相当する額を、本組合に速やかに返還するものとする。かかる返還金(以下「クローバック金額」という。)は、本組合への支払いをもって、当該組合員等の持分金額に帰属する。(後略)」
(出典:経産省モデルLP A 47条3項)
クローバックは、支払い済みの報酬等について後から清算するものです。
そのため、原則として、クローバック分を考慮、つまり共有財産から控除した上で財産分与を行うことになります。
ただし、クローバックが発動した原因がファンド運営者である配偶者自身の故意・重過失などによって生じたものである場合(例:財産分与を逃れるために意図的にクローバックを生じたさせた場合など)には、返還が生じた理由に応じてクローバック分を考慮せずに財産分与が行われる可能性があると考えます。
成功報酬はファンドに収益が生じた場合の対価として支払われるものであり、収益に対する一定割合をもって支払われることが一般的です。
そのため、成功報酬の対象となる期間の途中で別居が開始した場合には、成功報酬の一部が財産分与の対象に含まれると考えられます。
ただし、管理報酬は一定の期間(半期、一年など)ごとに支払われるのに対して、成功報酬は収益が出た場合やファンド解散時に支払われることが多く、対象となる期間が長期になるケースが多いです。
そのため、例えば10年経過して成功報酬が発生した場合に、最初の1年目の段階で別居が開始したケースと、9年目の段階で別居が開始したケースとで、成功報酬に対して同程度に夫婦の協力関係があったとはいえません。
この場合は、期間按分、つまり同居期間と別居期間を按分して評価する方法などが検討されることになります。
一方、成功報酬が期間ではなくある特定の事象を理由として生じるものである場合、その発生原因となる事情が別居前に発生している場合には、支払時期が別居後であったとしても、それは単に支払時期に関して猶予されているものに過ぎないとして、成功報酬の全てが財産分与の対象になる可能性もあります。
したがって、成功報酬の発生条件や支払条件を精査して主張を組み立てる必要があります。
Q7でご紹介のとおり、ファンド運営者は投資先から報酬を得る場合があります。
投資先から報酬を受領してもその分だけ管理報酬が減額される(つまり、トータルの報酬額は同じ)よう定められている場合は、管理報酬の減額に関して落ち度がある訳ではありません。
そのためこの場合は、減額分を考慮して、つまり減額された分を共有財産から除外して財産分与を行うことになると考えられます。
Q7でご紹介したとおり、ファンド運営者が得る報酬等にはいくつか種類があり、「報酬」という表現が用いられていない場合もあります(キャリードインタレスト、投資先から受領する手数料など)。
そのため、LPS契約書を確認する際には、「報酬」という表現に限らず、ファンド運営者に対して報酬等の利益が発生していないかよく確認する必要があります。

財産分与においては、どれだけ事前に資料を収集できるかが重要です。離婚に向けて別居を検討している場合には、別居前の同居期間中に配偶者の財産資料の収集を行うことが必要になります(別居後に相手方宅で収集することには問題が生じやすいです)。
離婚のプロセスと準備については以下のコラムをご参考ください。
・離婚問題の決着に向けて 〜離婚のプロセスと準備〜
・財産分与と財産調査 〜「いつ」「なにを」「どのように」調べるか〜
Q12のとおり、事前準備として資料収集が重要となります。
一方、どのような資料を収集すればよいのか、また、収集した資料をどのように分析すれば良いのか、特に配偶者にとってはご自身で判断できないこともあるでしょう。
ファンド契約においては、LLP(有限責任事業組合)、LPS(投資事業有限責任組合)、LP(有限責任組合員)、GP(無限責任組合員)など、特有の言葉が多用されています。
自身がファンドに関与していない立場である場合、契約書の内容を一見して理解することは極めて困難です。
また、持分や報酬債権の種類や性質、ファンドの構成、分配金や報酬などの支払時期、金額・方法などを契約書を見てご自身で正確に判断することも難しいでしょう。
ファンドに関して財産分与が問題となる場合は、ご自身がファンドに関与している立場であるか、配偶者がその立場にあるかに関わらず、離婚によるインパクトを把握することは重要です。
離婚が懸念される場合には、なるべく早期に弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所が取り扱ってきた事案の中で、配偶者(ファンド運営者)から提示された財産分与額がファンドからの収益を適切に反映したものか疑わしいとして争点化したケースがあります。
調査の結果、成功報酬の一部について、支払時期が離婚後であったことを理由に財産分与の対象から除外して計算されていることが明らかとなりました。
ファンドオーナー、ファンド運営者、いずれも収益構造(分配に関する定めや報酬体系)が複雑で、一見して理解できないケースが多いです。そのため、ご自身での対応ではこれらの事実を正しく理解することが難しい場合もあります。
実例の詳細については当事務所までお尋ねください。

以上、ファンドオーナー・ファンド運営者世帯の離婚で頻発する財産分与問題について解説してきました。
このほか、財産分与については以下のコラムも是非ご覧ください。
・資産の多い夫婦が離婚する場合の財産分与
・特有財産の立証 ー財産分与を回避する方法ー
・財産分与と財産調査 〜「いつ」「なにを」「どのように」調べるか〜
請求する側、支払う側、いずれにとっても財産分与対策はなるべく早期に実施することが重要です。
現時点で離婚が懸念されない場合であったとしても、現在のリスク状況を確認しておくことは非常に有益といえます。
離婚問題でお悩みの方は、初回のご相談は30分間無料※ですのでお早めに当事務所までご相談ください。
※ご相談の内容や、ご相談の態様・時間帯等によっては、あらかじめご案内の上、別途法律相談料をいただくことがございます。