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2025年11月28日(金曜日)
財産分与における高価なプレゼントの取扱い

配偶者に贈った高価なプレゼントは離婚にともなう財産分与においてどのように扱われるのか。

今回は、そのような離婚にあたって気にはなるもののあまり知られていない点についてお答えします。

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Question

私は、誕生日や結婚記念日などの記念日には、毎年配偶者に高価なアクセサリーやブランド品などのプレゼントを贈っていました。
しかしこの度、配偶者との間で離婚の話が出てきてしまいました。

これまで私が配偶者に贈った高価なプレゼントを取り返せないでしょうか。財産分与の対象として清算してもらえないでしょうか。
 
 

Answer

誕生日や結婚記念日などのプレゼントは、専用財産(特有財産の一種、専用品ともいいます。)として、財産分与の対象とならないことが一般的です。
 
もっとも、プレゼントの価値が非常に高く資産性を有し、夫婦の総資産に占める割合が小さくない場合には、公平性の観点から財産分与の対象に含まれる可能性があります。
高価なプレゼントのイメージ

プレゼントは原則として財産分与の対象とはならないが、高価な場合には別途検討が必要である

 
 

財産分与で問題となるプレゼントの取扱い

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦の協力によって築かれた共有財産を分け合うことをいいます(民法768条1項)。財産分与の基本については、以下のコラムをご参照ください。
 ・コラム「資産の多い夫婦が離婚する場合の財産分与」
 
一般的な夫婦間のプレゼントは数万円や数十万円の物であることが多いかと思いますが、富裕層世帯ではこれを超えるプレゼントをすることも少なくありません。数百万円や数千万円、なかには億を超えるような高価なアクセサリーやブランド品がプレゼントされることもあります。
 
しかし、夫婦が離婚する際には、それらプレゼントが問題となることがあります。
多くは「プレゼントするんじゃなかった」、「返してほしい」という趣旨のもので、法的には、プレゼントが財産分与の対象となるのかといった形で問題となります。
 
高価なプレゼント、特に高級時計や宝飾品等は、通常、夫婦で共有して使用することが予定されておらず、どちらか専用のものとして購入するものです。

この点に関して、専用財産という概念があります。
高価なプレゼントの代表であるダイヤモンドの指輪

富裕層世帯の場合は、一般的な家庭より高額なプレゼントがされることも

 

専用財産とは

専用財産とは、夫婦の合意により一方が専用するものとされた財産を指し、宝飾品等がこれに含まれます。

そして原則として、専用財産は財産分与の対象となりません
 
裁判例では、約80万円の指輪及び約30万円の指輪につき、これらの宝石類は、社会通念に従えば専用品であり、特有財産であるとして、財産分与の対象とならないと判断したものがあります(名古屋家審平成10年6月26日判例タイムズ1009号241頁)。
 
しかし、富裕層世帯では、個人の専用品(高級時計や宝飾品等の装飾品)であっても、その経済的価値が非常に高額であるものがあります。数百万円、数千万円、なかには億を超えるような高級時計や宝飾品もあり、これらは単なる装飾品ではなく、実質的には資産として機能しているとも評価できます。

このような場合に、「プレゼント」という形式をとっているからといって、贈与された配偶者の専用財産として評価し、財産分与の対象から除外してしまうことは公平性を欠き、相当ではありません。
 
そこで、財産の価値が非常に高く、夫婦の総資産に占める割合が小さくない場合には、公平性の観点から財産分与の対象に含めることが適当とされる場合があります。

裁判例として、ダイヤモンドの結婚指輪(評価額46万円~138万円)及びサファイアの指輪(評価額33万円~99万円)について、財産分与の対象としたものもあります(東京高判平成7年4月27日家庭裁判月報48巻4号24頁)。
 
 

入籍前(婚姻前)にもらったプレゼントの取扱い

ここまでは婚姻後のプレゼントについて解説してきましたが、プレゼントには婚姻前、すなわち入籍前のお付き合いしている間に贈られる場合もあり、これが問題になることがあります。
 
この点、財産分与の基準日は、入籍時(婚姻時)から起算されるものです
このため、入籍後(婚姻後)のケースと違って、原則として入籍前のプレゼントは財産分与の対象となりません
 
しかし、たとえ入籍前であったとしても、プレゼントをした時期が入籍日と近接している場合や、婚約の証として贈られたものであり、婚姻を前提とした財産のやり取りと評価できる場合には、財産分与の対象となる可能性があります。その際は、贈与の目的や経緯といった個別具体的な事情を詳細に検討する必要があります。
 
ただし、そのような特別の事情がない場合には、財産分与の論点の中で解決することは難しいでしょう。
高級時計のプレゼントイメージ

プレゼントは入籍前にもらう場合や、義母や義父からもらう場合もある

 
 

配偶者以外からのプレゼントの取扱い

富裕層世帯の場合、夫婦間のみならず、配偶者の親族から高価な宝飾品等の贈与を受けることも少なくありません。例えば義母からもらったネックレスや、義父からもらった時計などです。
 
これまでの解説のとおり、贈与された財産は原則として専用財産となりますが、時間の経過によって、専用財産であることの立証ができない場合があります。
 
そのため、贈与であることを示す資料がすぐにみつからないような場合には、財産分与を回避する方法を検討して、十分な対策をとる必要があります。
 
特有財産の基本については、以下のコラムもご参照ください。
 ・コラム「特有財産の立証 ―財産分与を回避する方法―」
 


 
以上、財産分与におけるプレゼントの取り扱いについて解説してきました。

正当な結果を得るためには、事実関係や法律関係を正確に整理・理解することが重要です。

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富裕層法務サービス Legal Prime®

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特設サイト「富裕層世帯の離婚」

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