芸能人・有名人の離婚は、財産分与、慰謝料、プライバシーの保護、メディア対応、そして子どもの保護など、一般の人々に比べ慎重な対応が必要な課題が伴います。
今回のコラムでは、芸能人・有名人が離婚問題にて直面する問題について、財産分与からプライバシー保護まで解説します。
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目次
芸能人など著名人の方は、収入形態や資産の取り扱いが特有であることが多いです。
特に、出演料、CM契約料、肖像権収入、ブランドとのスポンサーシップ契約など、通常の給与所得者にはない収入源があるため、これらの取り扱いには慎重を要します。
まず、芸能人など著名人の収入で大きなものとして、出演料やロイヤリティ(著作権収入)、肖像権収入などがあります。
これらの収入は多くは不定期であり、年によって変動が激しいことが特徴です。
たとえば俳優であれば、ヒットドラマに出演した年(出演料が得られる年)は収入が大幅に増加する一方、翌年には収入が減少する場合もあります。
また、ブランドのイメージモデルなどの肖像権収入は、ブランドイメージや人気に依存する部分が大きく、これもまた長期的に安定した収入とは言えません。
次に、有名人のなかには、自身で法人を運営していて、マネジメント契約やエージェント契約等をしている事務所からの収入など、一部の収入を当該法人づけにしている場合などもあります。
こういった場合には、個人の確定申告書のみを確認するだけでは実際の収入を捕捉しきれない場合があります。
こうした収入の問題は、婚姻費用の算定に大きく影響し、計算方法が複雑になる要因となります。
ただ、過去数年の平均収入や、将来的な収入予測を基にして分与の基準が設けられるケースも多いようです。
公平な婚姻費用を実現するためには、このような芸能人の収入特性を理解し、法的根拠に基づいて専門的に評価する必要があります。
財産分与においては、資産の透明性を確保することが一般に重要です。
芸能人・有名人の場合は、預貯金や不動産といった財産以外にも知的財産(無体財産)も保有している場合もあるため、資産の透明性確保が難しい傾向にあります。
また、財産分与の対象財産として、有名人本人が運営する法人名義の財産を考慮すべきかどうかは、ケースごとに判断が必要になります。
資産の透明性を保つためには、対象財産の判断や財産評価を行う弁護士や税理士などの専門家の協力が重要です。
また、離婚問題が表面化する前に、日頃から複雑な形態の所得や資産を適切に管理するために、包括的なコンサルティングを受けておくことも有効かもしれません。
そのほか、芸能人など著名人が資産家、高額所得者の場合には、特有論点として、①高額所得者世帯の婚姻費用の算定方法、②特有財産性の立証、③財産分与対象財産の多様性、④財産分与対象財産の価値評価、⑤財産分与の割合、⑥婚前契約の取扱いなどがあります。
高額所得者世帯ではない世帯の場合、婚姻費用算定表(裁判所のホームページで公開されているものです。こちら をご参照ください。)を用いて婚姻費用を算出することが一般的です。
しかし、婚姻費用算定表では、年収2000万円までの給与所得者、1567万円までの自営業者が対象とされており、これを超える年収の場合には、算定表を用いて婚姻費用を算出することができません。
そのため、高額所得者世帯の場合に、どのように婚姻費用を算出するかが問題となります。
この問題への考え方として、同居中の生活レベル、現在の生活レベル等を考慮して算出する見解などがあります。詳細はこちら のコラムをご参照ください。
特有財産とは、財産分与の対象とならない財産をいい、婚前財産、相続財産などがこれに該当します。
特有財産の転換物(例えば婚前の預貯金を原資に購入した不動産)も財産分与の対象にはなりません。
もっとも、特有財産の立証は、特有財産であると認めてほしい側が行う必要があり、立証のハードルは高いものです。
高額所得者の場合、婚姻前から多額の財産を築き上げ、それを婚姻後にも使用しているケースや、莫大な財産を相続等により承継しているケースが見られます。
これらの婚前財産や相続財産が適切に特有財産と認められるためには、綿密に資料を分析し、主張立証を行うことが不可欠です。
詳細についてはこちらのコラムをご参照ください。
保有財産が株式、新株予約権(ストックオプションなど)、ファンド持分、不動産、仮想通貨など多岐にわたるのも高額所得者の財産分与における特徴です。
ストックオプション・株式報酬の財産分与における取扱いについてはこちらのコラムを、ファンド関連の財産についてはこちらのコラムをご参照ください。
高額所得者は多くの不動産や宝飾品・骨とう品などの高価な動産を保有しているケースが多いです。
また、資産管理会社を立ち上げている場合には、資産管理会社の株式の評価も問題になります。
これらの財産の評価については評価の方法により評価額が大きく異なるケースもあり、裁判となった場合に当事者間で熾烈に対立する論点の一つです。
不動産の評価方法についてはこちらのコラム、非上場株式の評価方法についてはこちらのコラム、骨とう品等の動産の評価方法についてはこちらのコラムをご参照ください。
高額所得者の財産がその資格や才能により築き上げられたケースで問題となる論点です。
財産分与の割合は実務上夫婦間で2分の1ずつとされており(これを「2分の1ルール」といいます。)、このルールは実務上強固なものとなっています。
そのため、このルールを覆すためには、財産分与の割合を修正してほしい側から積極的かつ詳細に主張立証を行うことが必要です。財産分与の割合に関する詳細はこちらのコラムをご参照ください。
なお、有名人や芸能人の場合は、本人の特殊な能力・技能により取得することができた財産も少なくないかと思います。
このような点から、ある程度財産分与割合が調整されるケースもあります(配偶者の寄与度など一切の事情を考慮して決められることになります)。
将来離婚となった場合も見据えつつ夫婦財産契約(婚前契約)を締結しているケースが見られます。
婚前契約が締結されている場合、財産分与などは婚前契約の内容に沿って行われることとなります。
もっとも、婚前契約の内容が不適切と思われるものである場合、その有効性等について裁判上で争われることがあります。
婚前契約が無効となったケースについてはこちらのコラムで解説していますのでご参照ください。
芸能人や有名人の離婚における婚姻費用算定や財産分与には、CM契約料や肖像権といった一般的な収入形態とは異なる要素が含まれているほか、高額所得者でもある場合はさらに複雑化するため、特別な注意が必要です。
複雑な財産分与問題に対して、経験豊富な弁護士が適切に評価・対応することが、公平な分与と透明性の確保に不可欠です。
また、配偶者や関係者に対しての信頼性を確保するためにも、資産の開示や保護を徹底することが大切です。
芸能人や有名人の離婚では、慰謝料が高額になるケースがあります。
これは、離婚がもたらすメディアへの影響や、芸能人としてのイメージダウンによって大きな金銭的・心理的損害を被ることがあるためです。
以下では、慰謝料の増額要因について解説します。
不貞行為に基づく慰謝料請求は、不法行為に基づく損害賠償請求の一種であり、主として精神的苦痛に対して認められるもので、その金額はケースごとに異なります。
慰謝料の金額は、単純な計算で決まるわけではなく、不貞の頻度と期間、結婚期間などの個々の状況に応じて変動します。
慰謝料の相場は概ね50万円~300万円程度です。
芸能人や有名人の慰謝料では特殊な論点があります。
それは、メディアによる報道や世間の目によって不貞行為をした本人ばかりか、本来被害者である配偶者までプライバシーが侵害される等して、大きな精神的苦痛を被るケースがあるということです。これが慰謝料の増額につながることがあります。
もっとも、不法行為とは故意または過失により他人の権利または法律上保護される利益を侵害(権利侵害行為)し、被害者に損害を発生させる行為をいいます(民法第709条)。
そして、不法行為が成立するためには、権利侵害行為と被害者に発生した損害の間に因果関係が認められることが必要です。
この点、芸能人は不貞行為を行っただけであり、報道や世間への発信を行ったわけではないことから、不貞行為を行った芸能人がそうしたメディア・報道による影響のすべての責任を負うかどうかは論点となります。
例えば、不貞行為を行った場合に報道されることが確実であるほどの有名人であり、世間一般に被害者の配偶者の名前が公表されているケースのような場合には、報道により配偶者に発生した損害についても、不貞を行った芸能人も責任を負う(=報道による精神的苦痛の存在が損害額の認定で考慮される)ものと思われます。
一方、そのような有名人ではなく、一般に配偶者の顔や名前も知れ渡っていないケースの場合には、報道の責任を不貞行為を行った芸能人に負わせることはできないと思われます。
不法行為に基づいて請求できるのは精神的苦痛のみにとどまりません。
経済的な損害・損失が出ている場合にはこれらの賠償を求めることもできます。
この点、芸能人の場合、離婚は単なる個人的な問題に留まらず、公的なイメージやキャリアにも大きな影響を及ぼします。
例えば、不貞をされてしまった配偶者が芸能人である場合や、双方が芸能人の芸能人カップルなどでは、その方がCM出演やブランド契約などを抱えている場合、相手の不祥事が原因で契約が打ち切られることもあり、こうした損害が賠償額に反映されることがあります。
なお、高額な賠償額を求める際は、離婚問題に精通した弁護士からその主張と立証のサポートを受け、請求者側のイメージを守ることも重要です。
いたずらに高額請求をしていると受け取られるリスクを抑えるためにも弁護士への相談は不可欠です。
有名人・芸能人の離婚における慰謝料請求は、イメージやキャリアの保護を考慮する必要があり、一般の離婚よりも複雑であることが多いです。
不貞行為の証拠収集や具体的な慰謝料計算には、専門的な知識と慎重なアプローチが求められます。
そのため、経験豊富な弁護士による適切な法的支援が不可欠です。
有名人・芸能人の離婚では、プライバシーや名誉の保護が非常に重要です。
離婚に関する詳細が公になると、芸能活動やブランドイメージに大きな影響を及ぼすため、プライバシーや名誉を守るための法的措置や情報管理が求められます。
有名人・芸能人の行動については、多くの視線が向けられていることに注意しなければなりません。
例えば、離婚について相談するために法律事務所に頻繁に出入り等をしていれば、メディア関係者やファン等に目撃され、何か問題が生じているのではないかとの疑いが持たれる可能性があります。
そのため、電話、メール、ビデオ通話等のオンラインの手段を通じて連絡をとるなどの工夫が必要です。
通常の裁判では公開の場で離婚の詳細が議論されるため、メディアに注目されるリスクが伴います。
これに対し、裁判外での交渉や調停手続であれば、非公開の場で話し合いを進めることができ、関係者以外には詳細が漏れない環境が整います。
したがって、なるべく裁判にまで至らないよう、十分に準備をしたうえで、裁判外での交渉や調停手続での解決を目指すことで、できる限り外部に詳細が漏れないようにすることができます。
離婚問題が世間に発覚後、これに関する誹謗中傷やデマが拡散されると、本人だけでなく家族や子どもにも影響が及びます。
特に、子どもが学校や社会でいじめを受けるリスクがあるため、家族全体のプライバシーを守るために対策が求められます。
子どもに関する情報がメディアやSNSで流布されないよう、徹底した情報管理が必要です。
子どもに関する情報が不当に載せられていた場合には、削除等の対応が必要ですし、学校や関係者にも協力を仰ぎ、子どもに関する情報が漏れないよう十分に対策することが必要です。
子どもや家族に対するデマや虚偽の情報が拡散された場合、削除請求のほか、名誉毀損やプライバシー侵害として法的手段で対応することが可能です。
また、家族や子どもの精神的な被害には、専門家による心理的サポートを検討することも重要です。
問題が広がる前にプロアクティブな対策を講じることで、リスクを最小限に抑えられる可能性が高まります。
法的手段については弁護士が対応することが可能ですが、モニタリング等については、弁護士と各種専門家とが連携して対応することも考えられます。
インターネット上での情報をモニタリングし、デマや誹謗中傷が発生した場合に迅速に対応することで被害を最小限に抑えられる可能性があります。
万が一、離婚や家族の情報が漏れたことが判明した場合は、当該情報を得た者に対して、SNSでの発信や記事にしないことを求める通知・交渉をすることで被害を最小限に抑えられる可能性があります。
有名人・芸能人の離婚は注目度が高いため、メディアやインターネット上で誹謗中傷やデマが拡散されるリスクが伴います。
こうした悪意ある情報は、当事者本人だけでなく家族や子どもにも大きな影響を及ぼすため、適切な誹謗中傷対策や名誉回復が不可欠です。
虚偽の情報や誇張されたデマは、芸能人のイメージに深刻なダメージを与えるだけでなく、将来的な仕事や人間関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
デマや虚偽情報の拡散に対しては、次のような法的な手段を活用できます。
SNSやブログなどでデマが拡散された場合、その情報の削除請求を行うことができます。
削除が速やかに行われれば、デマの拡散や被害の拡大を防ぐことが可能です。
また、特定の発信者が継続的に誹謗中傷を行っている場合、発信者情報開示請求を通じてその個人を特定し、法的措置を取ることが可能です。
イメージを損なうような内容が含まれている場合、名誉毀損として訴訟を起こすこともできます。
特に誹謗中傷やデマが原因で仕事や契約が失われた場合には請求額は大きくなる可能性があります。
芸能人の離婚に伴う誹謗中傷やデマは、イメージの悪化だけでなく、家族や子どもへの影響も引き起こすため、適切な誹謗中傷対策と名誉回復が欠かせません。
経験豊富な弁護士が法的手段やモニタリングを通じて早期に対応することで、芸能人本人とその家族の名誉を守り、安心して離婚手続きを進めることが可能です。
芸能人や有名人の離婚問題においては、一般的な離婚とは異なる特有の問題が多々発生します。
婚姻費用や財産分与の複雑さ、メディア対応の重要性、誹謗中傷への対策など、多面的なサポートが必要です。
こうしたニーズに応えるためには、芸能人の離婚問題に特化した専門の弁護士のサポートが不可欠です。
専門弁護士による包括的なサポートにより、離婚に伴う心理的・経済的負担を最小限に抑え、円滑な手続きを実現できます。
また、名誉を守り、必要に応じてメディア対応を行うことで、離婚がキャリアに与える悪影響を軽減することができます。
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