離婚後の生活に不安を感じる方は少なくありません。
離婚は結婚と同じように人生の大きな転機ですから、そのような不安を感じることは自然なことです。
特に富裕層の方々にとっては、離婚後の生活の経済面、社会的地位、子どもの将来、資産の管理の問題などが複雑に絡み合い、様々な不安が生じることが多いものです。
これらの不安を軽減し、離婚後も安心して暮らしていくためには、徹底した生活設計と法的サポートが重要になります。
岩崎総合法律事務所は、富裕層向けに提供している法務サービスLegal Prime® を通じて、資産家や経営者の方が抱える特有の課題に応じた豊富な経験と専門的な支援を提供してまいりました。
当事務所では、離婚手続そのものにとどまらず、資産管理、生活設計、そして家族の将来を見据えた離婚後の生活の包括的なサポートを行っております。
今回のコラムでは、安心できる離婚後の生活を実現するために重要となるポイントを詳しくご説明します。
弊事務所では、富裕層法務サービス Legal Prime® を通じ、資産家、投資家、会社経営者などの資産・収入の多いお客様に対し多様なサポートを提供してまいりました。
これにより得られた知見の一部を書籍化し発売中です。ご興味をお持ちいただけましたら、書影をクリックして詳細をご確認ください。
目次
2 ケースに応じた柔軟なサポート:クライアントの希望や生活に沿った条件交渉
3 自分たちの子どもに財産を残すための法的措置
4 岩崎総合法律事務所が大事にしていること
5 おわりに:不安を抱える方へ──最適なサポートで安心した未来を
前述のとおり、離婚は人生における大きな変化であり、特に富裕層の方々には将来の生活水準や家族全体への影響など、様々かつ複雑な不安が伴います。例えば、以下のようなものが考えられます。
離婚後に十分な資産が残るか、生活水準が大きく低下しないかという不安です。
特に家事専業者等で長期間職を離れていた場合には、「今から就労したとして十分な稼ぎを得ることができるか、離婚時に受け取る資産だけで離婚後の生活、生涯を支えられるか」という点がより深刻な不安となることがあります。
離婚が子どもの教育や生活環境に与える影響の大きさ、親として双方が果たすべき義務が継続できるかどうかが懸念されることがあります。
富裕層の配偶者にとっては、離婚時に「どのような権利があり、何を主張できるか」を把握することがまず重要です。
離婚時には、例えば、①財産分与、②養育費(教育費)、③扶養費(扶養的財産分与)の請求を行うことが考えられます。
財産分与として、配偶者に対して、夫婦の共同生活の中で形成した財産を請求することができます。
この請求にあたっては、どの財産を財産分与の対象とするか(なお、財産分与の対象とならない財産を特有財産といいます。)、夫婦共有財産をどのような割合で分け合うか(原則として2分の1ずつですが、例外的に割合に傾斜が掛けられる場合があります。)などといった点が重要な論点になります。
特有財産や割合の問題などは以下のコラムで詳しく解説しています。
・特有財産の立証 ー財産分与を回避する方法ー
・財産分与の割合は”常に50%”ではない 2分の1ルールが修正されるケースとは(5%、30%、40%とした裁判実例付)
養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用(こちらの法務省のサイトもご参照ください。)をいいます。
月額の養育費の額は夫婦双方の年収に基づいて判断されます。そのため、夫婦の年収が重要な論点になります(年収の額の判断は婚姻費用と同一です。年収の認定方法については婚姻費用に関するこちらのコラムもご参照ください)。
また、塾代、私立学校の授業料等といった特別の出費(これらの費用を「特別費用」といいます。)は、月額の養育費に加算して支払われることとなります。
特別費用の請求が認められるためには、配偶者の承諾が必要となるケースが多く、明示又は黙示の承諾の有無が重要な論点となります。
本来、離婚後は扶養義務はなくなるものですが、一方が離婚後に経済的に自立して生活することが困難である場合に、配偶者から一定の支払いを受けることができるケースがあります。
この請求にあたっては、請求を行う側の離婚後の就労困難の程度、資産状況などが重要な考慮要素になります。
熟年離婚を行った場合の扶養的財産分与の可否についてはこちらのコラムで解説していますので併せてご参照ください。
離婚後の生活基盤を安定させるためには、離婚前から、将来に必要となる資金を明確に見極め、見通しを立てておくことも重要です。
訴訟で裁判所が認めると見込まれる支払額をもってしても、それだけでは現在の生活水準を維持できないケースも少なくありません。
そのため、岩崎総合法律事務所ではクライアントの現状と希望する生活をもとに、必要な資金の見通しを立てるお手伝いも行っています。
離婚後の生活においては、日常の生活費だけでなく、将来的な医療費や住宅のメンテナンス、子どもの教育費といったあらゆる支出を視野に入れることが重要です。
現在の生活水準を保つために実際どの程度の金額が必要かを考えることで、必要資金をより正確に見積もることができます。
離婚後に受け取る財産をどのように管理・運用していくかは、長期的な生活基盤に影響を与える大切な要素です。
運用の見込みも含めて必要資金を見積もります。
将来必要な資金を正確に見積もっておくことで、必要額の主張が充実します。
見積もりが不十分な場合、本来請求できるはずの金額や費用を裁判手続の中で主張し忘れ、受け取ることができないという事態が生じかねません。
また、配偶者から受け取れる金額は、養育費よりも婚姻費用の方が高額であることが多いです。
そのため、生活を維持するためにしばらく婚姻関係を継続して婚姻費用を受け取るといった方針も選択肢の一つになります。
一般的な婚姻費用の算定方法、高額所得者世帯の婚費算出方法については、こちらのコラムで解説していますので併せてご参照ください。
財産分与にあたっては、金銭を受け取る選択肢だけではなく、不動産といった特定の財産を現物で分与してもらうことも可能です。
離婚後、適切な住居を新たに確保しようとするとき、自分の名義で行うことが困難なこともあります。
こうしたときには現住居を現物のまま分与してもらい、離婚後も住み続けることを検討します。
他にも現物のまま取得したい財産を正確に見極めておくことで、適切に主張、交渉することが可能になるでしょう。
財産分与の判断は「一切の事情」を考慮して行われます。これまでの婚姻経過、生活水準と併せて将来の必要資金額がいくらほどかということは「一切の事情」にて考慮され、財産分与の判断に影響を及ぼすこともあるでしょう。
財産分与の方法についてはこちらのコラムでも解説していますので併せてご参照ください。
扶養費(扶養的財産分与)を受けるにあたっては、将来の就労困難の程度や将来の資金状況などが考慮されます。
将来の見通しを十分に検討しなければ説得的な主張は難しいでしょう。
離婚問題を切り出すことによって配偶者が激昂しその後の生活費が打ち止めになるのではないか、教育費を一切出さないのではないか、不安になることは多いでしょう。
特に貯蓄することができなかった家事専業者の方にとってはとても切実な不安です。
この点、当事務所が担当してきた案件の多くでは、生活費(婚姻費用)を一切支払わないということは、請求者の側が不倫をして出ていったなどのごく例外的な場面を除いては、一件もありません。
それは、生活費を一切支払わないということそのものが「悪意の遺棄」として違法性を帯び、それだけでなく有責配偶者として評価され今後の離婚問題そのものに直結する問題を生じさせるためです。
これは例えば、幼い子どもが同意なく連れ去られた事案や、相手がDVの常習者であった事案、負担の大きい離婚条件の提示を行った事案など大きな葛藤が生じやすい類型の事案でも同様です。
このため、一切を支払わないということはあまり起こらないように思います。
もっとも、一般的な水準より高い生活をしてきた場合は、これまでのような余裕のある生活ができるほどの支払いが得られず、かなり切り詰めながら、時には貯蓄を切り崩しながらの生活を余儀なくされることもあります。
最終的に事件が解決すれば足りなかった分については清算され、その時点で一気にまとまった支払いを得ることができる場合が多いものの、そこに至るまでの生活の維持のためには十分な注意が必要です。
なお、急ぎ生活費を確保するために保全の手続(緊急性の高い事件で仮のものとして暫定的に一定の判断を下すための手続です)もありますが、これを申し立ててもほとんどの場合本案(通常の婚姻費用調停・審判の手続です)と同様に進行し、保全を申し立てた意味がないケースや、緊急性が高いとは言えないとして却下されるケースが多いように思います。
それは、そもそもの婚姻費用の本案そのものが急ぎ進行される性質のものであることや、生活が直ちに成り立たなくなるほどの切迫性がない事案がほとんどであることといった事情があるからかもしれません。
万が一、一切生活費が支払われず、かつ生活が直ちに困窮する場合には即時保全の申立ても行うべきですが、それでもこの保全の手続に期待しすぎるのは危険ですので、やはり自衛の措置が欠かせないように思います。
ボーディングスクールなどの高額な教育費ですが、離婚問題によって支払いを停止されてしまうといったケースも残念ながら世の中にはあると思います。
しかし、いわゆる富裕層と言われる世帯の方々の離婚事件を多く担当させていただいた中では、一切支払わないというものにこれまで一件も接したことがありません。
それは、支払う側が子どもとの交流を悪意をもって阻害されている事案や、苛烈な人格攻撃を受けているといった事案、負担のとても大きい離婚条件を求められている事案といったように、支払う側が受けている負荷が大きいケースでも同様です。
高額な教育費を全部負担するからその代わりに離婚条件はこうあってほしいといった交渉は当然ありますが、支払いを停止し国内に戻って来ざるを得ない事態となるようなことや学校を退学・転校しなければならないようなことは富裕層世帯の方々、要するに払おうと思えば払える方々にとっては滅多に起こり得ないのではないでしょうか。
それはやはりお子さまを大切に思う気持ちがあり、そして教育が重要であることをご理解されているからなのでしょう。
離婚に際して、新たに自分自身で住まいを確保するのが難しいケースがあります。
たとえば、家事専業者などで収入がないため賃貸の審査に通らない場合です。
このような状況では、元配偶者に「名義を貸してほしい」と頼むべきか検討することもあるでしょう。
しかし、名義を貸して賃貸契約を結ぶ行為は、いわゆる転貸行為に該当する可能性があります。
賃貸人の許可を得ずに転貸行為を行った場合、契約の解除や違約金の請求を受けるリスクが高いです。
さらに、契約解除後に新たな転居先がすぐに見つからない場合、賃貸物件を不法占拠する形となり、解除日以降に賃料の2倍など厳しいペナルティが科される可能性もあります。
このように、名義貸しには重大な法的リスクが伴います。
したがって、名義貸しの方法ではなく、例えば住居を財産分与として譲り受ける、分与を受けた財産から住居を購入するといった方法や、賃貸を選択するにしても、定期借家物件や敷金積み増し・家賃の先払いなどの諸条件の調整による交渉や審査の厳しくないエリア・管理会社・オーナーなどを検討するほうが良いでしょう。
離婚後の生活を見据えるうえで、生活水準を維持し、必要な資金を確保するための交渉は重要です。
岩崎総合法律事務所では、必ずしも裁判で認められる金額にとらわれず、クライアントの今後の生活を考えて交渉します。
例えば「裁判で100が認められるとしても、200が必要」といった、法的な権利以上のものを求めたい場合があります。
このときには、関係する様々な離婚条件の調整も重要ですが、結婚生活で積み上げた関係性、連れ添ってきた責任、そして子どもとの関係なども重要な要素となります。
そのため、このような離婚条件部分以外の要素も踏まえた上での交渉が重要となります。
実際のところ、その時点の両者の関係性や支払う側の資力の状況に大きく左右されるものの、法的な権利以上の内容にて決着するケースもあります。
例えば、財産分与するべき金額も多くはない中、妻が離婚後の収入を確保することが難しい状況であった夫婦の事例です。
この事例で夫は妻の生活に配慮して裁判基準を超える支援を提案しました。
具体的には、妻が亡くなるまでの期間、月額40万円の生活補助を提供することと、住む家を提供しました。
このように離婚後の生活に配慮して裁判基準以上の条件が提供されることもあります。
毎回の支払いについてのやり取りを避けるため養育費の支払いを一括で得ようとすること、そもそもの財産分与の金額について高額な条件を求めようとすること、こうしたことには実は税務上のリスクが存在します。
解決金にするとか財産分与にまとめてしまうとか、そうした名目の問題ではなく、実質的に見て諸条件を解釈したとき、通常の裁判基準よりも高額である場合には、受け取り手に贈与税の負担が生じる可能性があるのです。
離婚と税務の問題についてはこちらもご参照ください(コラム:離婚と税金~離婚給付(財産分与、養育費、慰謝料)に関して思わぬ課税が生じないように~)。
こうした将来ありうる税金の負担は本来受け取る側の配偶者が負担するべきですが、それをも他方の負担とする場合には取り決めが必要ですので、税務についても漏れなく検討するべきでしょう。
一方で、「裁判所で500が認められるとしても、200で十分」とお考えになるケースも考えられます。
例えば、子どもや配偶者の会社に負担をかけたくない、配偶者との間で良好な関係を保ちたい、早期かつ穏便な解決を目指したい、別れるとはいえそれまで家族のために尽力してきた配偶者に一定の配慮をすべきと感じている、500をもらっても残りの自分の人生で使いきれない、子どもに残るならそれでいい、といった考えを持たれている方もおられます。
そうしたときには全力で戦えば500を得られるものの、あえて少ない200で済ます、ということもあります。
前述のとおり、離婚において、クライアントの中には法的な基準よりも低い額で合意する方もいます。そうした方の中には、残りの資産を子どもに遺るようにしたいと考えておられる方も少なくありません。
相手の再婚などで家庭環境が変化しても、子どもに確実に資産が還元されるようにするためには、信託や法人などを活用した法的措置が有効です。
家庭で築いた資産はその家庭に還元されるべき、という考えを実現するため、岩崎総合法律事務所では信託契約の設定や法人の活用など、多様な手法を用いて将来に備える提案を行っています。
また、離婚協議書にて資産を子どもに承継する旨を記載するとともに、これに違反した場合のペナルティ条項を盛り込んでおくことも、子どもに財産を残すという目的の実現に向けた有効な手段です。
岩崎総合法律事務所では、複数の手法を組み合わせて、婚姻期間中に築いた財産が、配偶者の再婚相手やその家族に渡らず、自身の子どもにのみ還元されるようサポートします。
岩崎総合法律事務所では、権利はあくまで法律関係を示すものであり、それ自体が最終目的ではないと考えています。
当事務所が大切にしているのは、クライアントが新たな生活を安定して築き、前向きに歩み出せるよう支援することです。
単なる勝敗を争うのではなく、クライアントやその子どもたち、ときには、別れることになる配偶者をも含め、できる限り安定した生活基盤を持てるように解決策を提案しています。
この信念に基づき、岩崎総合法律事務所では、法的な手続を進めることはもちろん、クライアントの長期的な生活設計や資産の扱いに至るまで、幅広いサポートを提供しています。
当事務所のモットーは、未来に向けてクライアントを全方位的に支えることです。
離婚後も安心して暮らせる生活基盤を築くためには、経済的な安定を支える対策と、将来を見据えた生活設計が重要です。
財産分与や扶養義務、子どもの将来設計や資産の管理・運用まで、幅広い観点から検討することが必要です。
岩崎総合法律事務所では、これらすべての側面でクライアントに寄り添い、法的手続きから長期的な生活設計に至るまで全方位的なサポートを行います。
もし離婚後の生活についてお悩みであれば、初回のご相談は30分間無料※ですので当事務所にお気軽にご相談ください。
※ご相談の内容や、ご相談の態様・時間帯等によっては、あらかじめご案内の上、別途法律相談料をいただくことがございます。