ここでは、富裕層や芸能人を中心に最近注目を集めている「婚前契約」(夫婦財産契約)について、Q&A形式で解説します。
婚前契約(夫婦財産契約)は、入籍日よりも前に締結する必要があります。効力の有効性担保や保全の観点からは公正証書化することも重要です。公正証書化までのプロセスを見据えて、超特急で内容を決めていくにしても入籍日の3週間前くらいからは着手しなければなりません。
時機を逃すと、婚前契約(夫婦財産契約)としての効力が生じなくなる恐れがあります。入籍日が迫っている方は当事務所まで直接お問い合わせください 。
なお、既に結婚後である場合、婚前契約(夫婦財産契約)と完全に同一ではありませんが、「婚後契約」を締結することでカバーできることがあります。詳しくは、こちらのコラムをご覧ください。
▼岩崎総合法律事務所の強み・特徴
岩崎総合法律事務所では、上場企業・未公開企業オーナー、経営医師のように自社の事業にて資産を形成されている方、M&Aや不動産などによって個人名義で資産を形成されている方など既に多くの資産をお持ちの方をはじめ、上場準備企業のオーナーや、タレントの方などのためにも、そのご状況に応じて様々な婚前契約(夫婦財産契約)を多数ご用意して参りました。
金融機関やファンド関係者の方々からご紹介いただくことも多いですが、お客様個人から直接お問い合わせいただいて対応することも多くございます。
様々なご状況・ご要望に合わせて対応するための実績・知見があることが当事務所の特徴の一つです。また、婚前契約(夫婦財産契約)をより実効的なものとするためにはその後の運用管理が重要です。
婚前契約(夫婦財産契約)以外にも、ファミリーとしての資産を形成・保全するためには様々に重要となる法律問題があります。岩崎総合法律事務所にてサポートさせていただく場合には、
その後の婚前契約(夫婦財産契約)の運用管理、ファミリーとしての資産形成・保全に関する助言についても、追加費用なく引き続きサポートさせていただいております。ファミリーの末永い発展・繁栄のため、運用面も含めて総合的にサポートできることも当事務所の特徴の一つです。
弊事務所では、富裕層法務サービス Legal Prime® を通じ、資産家、投資家、会社経営者などの資産・収入の多いお客様に対し多様なサポートを提供してまいりました。
これにより得られた知見の一部を書籍化し発売中です。ご興味をお持ちいただけましたら、書影をクリックして詳細をご確認ください。
「婚前契約」(夫婦財産契約)は、結婚しようとする夫婦が結婚の前にする契約であり、家事の分担や財産の管理方法、離婚後の財産分与についてなどを定めるものです。
婚姻中に行われる夫婦間の契約は、婚姻中原則として取消可能状態にあります(夫婦間の契約取消権)。婚前契約(夫婦財産契約)を婚姻前に適式に取り交わすことによって、夫婦間の財産について取消可能状態になることなく取り決めできます。「プレナップ」と呼ばれることもあります。
婚前契約(夫婦財産契約)についてのトレンド
2019年11月、女優の深田恭子さんが不動産会社社長と婚前契約書を取り交わしたと一部メディアで報じられました。契約書は、弁護士をとおして作成され、破局時に「財産を請求しない」などといった文言が含まれたようです。欧米では婚前契約(夫婦財産契約)のことを「プレナップ(prenup)」といい、ハリウッドセレブや富裕層などを中心に普及しています。日本では民法上の制度として「夫婦財産契約」制度が設けられているものの、これまであまり利用されることはありませんでした。
しかし近年、日本でも芸能人や富裕層を中心に婚前契約(夫婦財産契約)が注目を集めているといえます。
また、上場準備企業のオーナーなど将来資産家となることが見込まれる方、資産の多寡に関わらず会社のガバナンスの観点から株式の扱いを決めておかなければならない方、夫婦関係の問題が社会の耳目になりやすいタレントなどの方からの問合せも、当事務所には多数寄せられています。
資産が多い夫婦の場合、離婚時の財産分与において、以下の4つの問題が深刻化するケースが多く見受けられます(こちらのコラムもご覧ください)。
結婚前に婚前契約(夫婦財産契約)を締結し、上記の内容を契約において事前に明確にすることで、財産分与の問題が及ぼす経済的打撃を最小限にとどめ、かつその影響を予測の範囲内に収めることができます。
なお、既に結婚後である場合、婚前契約(夫婦財産契約)と完全に同一ではありませんが、「婚後契約」を締結することでカバーできることがあります。詳しくは、こちらのコラムをご覧ください。
婚前契約(夫婦財産契約)はその性質上、万一の離婚を見据えた内容でもあります。このため、これから夫婦になろうとする者同士にとってはその内容の取り決めに心理的困難が生じることがあるのはある意味当然です。
そのような場合に備えて、穏便かつ自然な交渉をすすめるための後方支援を受けることや、場合によっては中立的な第三者を介して取り決めるなどといったサポートを受けることも有益です。
とはいえ、そもそも婚前契約(夫婦財産契約)は、これから結婚される企業経営者・富裕層の方にとって、資産防衛の観点から必須の契約ですし、また、婚前契約(夫婦財産契約)には離婚後の取り決めだけでなく、婚姻中の生活や、一方が先立たれた場合のケアなど、お互いを想い合った様々な約束を盛り込むことが可能です。
安心して素敵な結婚生活を送るために重要な役割を果たすものであるということをお二人が良く認識することが、なによりの出発点かもしれません。
婚前契約(夫婦財産契約)を締結していなかった場合、たとえば以下のような財産について、その半分を喪失する可能性があります。
婚前契約(夫婦財産契約)を締結していた場合、上記問題に対処可能です。
婚前契約(夫婦財産契約)は、入籍日よりも前に締結する必要があり、婚姻後は原則として変更できない点に注意が必要です。
作成方法に法律上の決まりはありませんが、合意内容を明確にする必要性から、以下2つの方法の中から選択して締結することになります。
効力の有効性担保や保全の観点からは公正証書化をお勧めしますが、公正証書化までのプロセスを見据える場合、超特急で内容を決めていくにしても入籍日の3週間前くらいからは着手しなければなりません。合意内容によっては、私製証書のみを作成する場合も、両方とも作成する場合もあります。
必ずしも登記が必要な訳ではありません。登記については当事者間で合意した内容を第三者や当事者の承継人(相続人など)に効力を及ぼすために必要ですが、内容が公示され第三者が閲覧できてしまうというデメリットとトレードオフになります。
結婚しようとするお相手が資産を勝手に処分できないように管理・運用することで対応できるのかをよく検討したうえで、登記の要否を判断する必要があります。
以下の法定財産制(民法760条~762条)に関する事項のほか、これ以外の結婚生活に関連した様々な事項を定めることができます。
ただし、以下のような内容が含まれると、契約自体が無効と判断されるおそれがありますので注意が必要です。
以下、婚前契約(夫婦財産契約)が無効と判断されたケースを紹介します。
婚姻前に締結した誓約書について、一方の申し出により自由に離婚できる旨の条項を無効と判断し、仮にそうでないとしても財産分与に関する取り決めは協議離婚のみを想定したものと限定解釈したケース
(東京地裁平成15年9月26日判決)婚姻前に締結した誓約書の「お互いにいずれか一方が自由に申し出ることによって、いつでも離婚することができる。」との規定について、裁判所は、「本件誓約書は、定められた金員を支払えば、原被告のいずれからも離婚を申し出ることができ、他方、その申し出があれば、当然相手方が協議離婚に応じなければならないとする趣旨と解される。そうだとすると、本件誓約書は、将来、離婚という身分関係を金員の支払によって決するものと解されるから、公序良俗に反し、無効と解すべきである。」と判断しました。
また、裁判所は、仮に無効ではないとの前提に立ったとしても、婚姻前に締結した誓約書の財産分与の規定に「協議離婚をした場合は」との文言が用いられていた点について、誓約書作成前にアメリカのprenuptial agreement(婚前契約書)作成を提案するほどであったことなどから、協議離婚と裁判離婚の区別を付けられる知識を有していたこと等を根拠として、裁判離婚における誓約書の効力を否定しました。
「本件誓約書は、文言上、協議離婚しか想定されておらず、また、その草稿を作成したaq(注:当時、原告(夫)の部下であった者)も、協議離婚と裁判離婚等のその他の離婚を区別して作成したものであること、米国の婚前契約書のことまで熟知していた原告が日本の裁判離婚と協議離婚の区別がつかなかったとは到底考えがたいことを考慮すると、本件誓約書が、協議離婚の場合しか想定していないことは明らかである。」「よって、その余の点について判断するまでもなく、本件誓約書は、裁判離婚が問題となっている本件においては、効力はない。」などと判示されています。
婚前契約(夫婦財産契約)の内容を第三者が閲覧することはできません。もっとも登記されたものについては、婚姻費用の分担、日常家事債務の連帯責任、夫婦間の財産の帰属の内容を知ることができます。
登記は、窓口申請(登記所又は法務局)、郵送申請のいずれかの方法で取得することが可能ですが、申請にあたっては、管轄する登記所又は法務局に対して、登記簿謄本交付申請書を作成・提出し、取得したい登記を特定する必要があります。したがって、「東京で過去に登記された全て」というような形で申請することはできませんし、管轄外の登記は取得することができませんので、事前に作成日や管轄する法務局(本局・支局の別)を把握する必要があります。取得費用は1件あたり600円です。
窓口申請の場合はその場で取得することが可能ですが、郵送申請の場合は申請書の送付から取得までにおおむね1週間ほどかかり、申請書の不備等があれば法務局の方との連絡が必要となりますので更に時間を要することになります。
岩崎総合法律事務所では、国内の全法務局から取り寄せられた登記情報のデータベース(2012年7月時点)を利用することにより、婚前契約(夫婦財産契約)の内容の調整にあたって、第三者の例を参考にすることが可能な環境があります。
資産が多い夫婦の場合、一般的な夫婦と比較して、契約内容が複雑となります。記載漏れなどがあった場合、契約が無効と判断されたり、かえって紛争を泥沼化させたりするリスクがあります。婚前契約(夫婦財産契約)を締結する場合は、豊富な経験とノウハウを持った弁護士に依頼することが望まれます。
また、婚前契約(夫婦財産契約)はその有効性の担保と、散逸、隠滅ないし偽造防止の観点から、公正証書化すべきです。
この点、公証人は、裁判官や検察官出身者が就いていることが多く、公平の立場から契約内容を確認します。財産分与について真実公平であっても一見、一方に有利となる内容とも読める場合、公証人から公平性を欠くなどとして公正証書化を拒絶される可能性があります。この時に、弁護士が代理人として交渉することで、お客様の希望を法的に整理し、内容を正しく公証人に伝え、迅速な公正証書化に向けて説得する役割を果たします。
また、婚前契約(夫婦財産契約)を締結する際には、結婚するお相手ご本人に納得してもらう必要があります。このとき、感情的な問題もさることながら、権利と義務の観点から基準になるラインがどこかを認識して説明準備の態勢を整えておくことが有用であり、弁護士であれば、そのような観点からサポートが可能です。
婚前契約(夫婦財産契約)において、一般に最重視されることは離婚時の財産分与に関する取り決めです。会社経営者であればそうした財産分与が会社経営に及ぼす影響を最小化することが重視されるでしょう。
したがって、もし数年後離婚して財産分与する場合、婚前契約(夫婦財産契約)が締結されていなかったら、自身や会社がどのような結果となるかを理解することが極めて重要です。
資産の多い夫婦の場合、夫婦それぞれが保有する資産の意義、当該資産の取得方法、市場、評価方法、処分先候補の確保、処分に伴い発生するコスト、今後見込まれる価値変動、アップサイド/ダウンサイド等についての十分な理解を前提にしないと、もし数年後離婚して財産分与する場合の結果を理解することは困難です。
このように、婚前契約(夫婦財産契約)では、資産の意味をよく理解し、資産のある夫婦でトラブルになりやすい事項は何かを予測して予防できる能力をもった弁護士に依頼することが重要と考えます。
また、婚前契約(夫婦財産契約)作成の経験がない弁護士に依頼した場合、公証人の指摘に対応しきれず、当初期待した内容での作成が難しくなる可能性があります。
公正証書で婚前契約(夫婦財産契約)を締結する場合、公証人により内容の確認を受けることになりますが、真実公平であっても内容が一見して一方的な規定については、厳しく指摘を受けることがあり、希望どおりの内容で作成してもらえないこともあります。公証人は法曹経験者の方がほとんどのため、十分な法的知識を前提として、内容を正しく公証人に伝え、迅速な公正証書化に向けて説得する必要があります。
婚前契約(夫婦財産契約)は近年注目されてきているものの、実例が少なく、積極的に分析している弁護士が少ないのが現状です。婚前契約(夫婦財産契約)について十分な知識と経験を有する弁護士に依頼されることが重要と考えます。
なお、離婚時の財産分与資産の多様性に係る要点については、こちらの記事で解説していますのでぜひご覧ください。
まずは、無事に締結することができたら一安心です。
とはいえ、これは婚前契約(夫婦財産契約)に限らずあらゆる契約にいえることですが、締結した契約書に期待通りの効果を求めるためには、契約書の内容を正しく理解し、契約書の内容に沿って運用しなければいけません。
この意味で、婚前契約(夫婦財産契約)は現実的に実践できる運用かどうかも検討の上で作成する必要がありますし、契約締結後も契約書に沿って正しく運用しなければいけません。
運用が複雑、煩雑に感じる場合は、専属プライベートバンカーや弁護士、税理士などに協力を要請することも一考です。特に、自分が行っている運用が、婚前契約(夫婦財産契約)の内容に沿うものかどうか疑問に思った際には都度確認できる体制があることが望ましいです。
当事務所のお客様にはこうした体制も一緒にご用意させていただいております。
ベンチャー企業専用 婚前契約(夫婦財産契約)雛形
資産家夫婦の財産分与トラブルを防ぐ「婚前契約」(夫婦財産契約)という選択
婚前契約ではない「婚後契約」という選択肢
資産家カップルの事実婚・パートナーシップ ~あえて結婚しないという選択~
起業家100名に婚前契約のセミナーを行いました
今回は、「婚前契約」(夫婦財産契約)に焦点をあてて解説させていただきました。婚前契約(夫婦財産契約)は、これから結婚される企業経営者・富裕層の方にとって、資産防衛の観点から必須の契約であるといえます。会社経営者にとっては、自社、従業員、株主その他ステークホルダーのためにもより必須といえるでしょう。
また、婚前契約(夫婦財産契約)には離婚後の取り決めだけでなく、婚姻中の生活や、一方が先立たれた場合のケアについてなど、お互いを想い合った様々な約束を盛り込むことが可能であり、安心して素敵な結婚生活を送るために重要な役割を果たします。ぜひとも作成をご検討ください。
岩崎総合法律事務所には、富裕層向けコンサルタント資格であるプライベートバンカーライセンスを保有する弁護士が所属しており、これまで様々な富裕層、資産家の方を対象にリーガルサービスを提供しています。婚前契約(夫婦財産契約)の作成についても多くの実績があります。
富裕層と一言で言っても、夫婦それぞれの婚前財産、収入状況、資産家としての特性(上場・非上場企業オーナー、医師などのプロフェッショナル、不動産オーナー、エンジェル投資家等)は様々です。ご相談者様の特性を踏まえ、資産保全と今後の健全な夫婦生活のために最適なソリューションをご提案させていただきます。
また、婚前契約(夫婦財産契約)に限らずあらゆる契約にいえることですが、締結した契約書に期待通りの効果を求めるためには、契約書の内容を正しく理解し、契約書の内容に沿って運用しなければいけません。
岩崎総合法律事務所が提供する富裕層法務サービス Legal Prime® では、設計から運用、そして万一の際も見据えて継続的なフォローアップを通して婚前契約(夫婦財産契約)を真に意味のあるものとします。
これから結婚されるお客様にとって最善のスタートが切れるようにサポートさせていただきます。初回のご相談は30分間無料ですので、お気軽にご相談ください。
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