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2021年4月26日(月曜日)
資産家カップルの事実婚・パートナーシップ ~あえて結婚しないという選択~

seminar

こちらから起業家100名に行った婚前契約セミナーの様子をご覧いただけます。
パートナーシップ・事実婚についても若干言及しています

ここでは、一部の富裕層や著名人を中心に最近注目を集めている、あえて結婚せずに「パートナーシップ関係」(事実婚)を選択する際の注意点について、Q&A形式で解説します。

結婚していない男女間の親密な関係は多種多様です。当事者の意識や生活実態においては夫婦同然の者から恋人関係まで濃淡があります。

主体的に、法律上夫婦となることによる様々な規律から自由でありたい、自分たちの関係性を自由にデザインしたい、そのような意識を持つ方々のうち、特に経営者・資産家にとって関連の深い内容を重点的に取り上げます。

 

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目次
  1. 婚姻届さえ出さなければ自由な関係になるのでしょうか
  2. 婚姻かパートナーシップ関係か悩んでいます
  3. パートナーシップ契約の締結は重要なのでしょうか
  4. パートナーシップ契約の定め方にルールや制限はないのでしょうか
  5. パートナーシップ契約で定めるべき内容を教えてください
  6. 内縁・事実婚として法的効果が生じるのはどのような場合でしょうか
  7. パートナーシップ関係での財産分与はどのように規律されるのでしょうか
  8. パートナーシップ契約書の説明を相手にするのがハードですがどうしたらいいでしょうか
  9. パートナーシップ契約の作成方法を教えてください
  10. パートナーシップ契約の作成を弁護士に依頼するメリットは何ですか?
  11. 弁護士であれば誰でもパートナーシップ契約の作成が可能ですか?
  12. パートナーシップ契約を締結したら安心していいのでしょうか?

 

Q. 婚姻届さえ出さなければ自由な関係になるのでしょうか

カップルのイメージ

婚姻届を出さない事実婚、パートナーシップ関係にも法的保護は与えられる

婚姻届を出していないからといって、それだけでは、結婚にまつわる様々な規律から自由になることはできない場合があります。

婚姻届を提出して法律上の結婚(法律婚)が成立した場合には、主として以下のような法的効果が生じます。

  • 貞操義務
  • 重婚禁止
  • 共同親権
  • 配偶者相続権
  • 婚姻費用分担義務
  • 財産分与 (※なお、資産の多い夫婦が離婚する場合の財産分与については、こちらのコラムをご覧ください。)

一方、婚姻の届出をしない場合、原則としては、上述した法的効果は発生しません。

しかし、同居期間が長くなったり、経済的な分担関係が深まるなど、関係がある程度強固なものになってくると、内縁ないし事実婚とみなされ、上述した法的効果のうち一定のものが生じることになります。判例上も確立した立場です。

どのような法的効果が生じるかは、問題となる具体的な事項ごとに、結合の排他性・継続性、同居・家計の共同性の有無、社会・周囲の承認の有無、婚姻障害の有無などによって定まるとする考え方が近時では有力です。

Q. 婚姻かパートナーシップ関係か悩んでいます

婚姻とパートナーシップ関係の法的な取り扱いの違いを認識するところが出発点です。

まず、婚姻の場合とは「規律の在り方が異なる」ものがあります。制度の違いそれ自体に由来するものです。

上述した法的効果の違いのほか、関係の解消について、パートナーシップ関係は、一方当事者の解消の意思表示と事実上の関係の廃止(典型的には別居)によって成立します。関係の解消がたとえ一方的であったとしても、相手方当事者が同居請求を行うことはできません。相手方当事者としては、関係の不当破棄に伴う慰謝料等の損害賠償請求や、財産関係の清算(財産分与)などを求めるほかありません。

また、パートナーシップ関係には、婚姻の場合に認められる「規律が生じ得ない」ものもあります。こちらも制度の違いそれ自体に由来するためです。

具体的には、主に以下のようなものです。

夫婦同氏は認められない

氏(姓)は別となり、戸籍も別々になります(住民票は同一世帯とすることができます)。
子が父の氏を名乗るためには、家庭裁判所による子の氏変更の審判を得ることが必要です。
父の戸籍に入籍させるためには、子の氏変更の審判を取得後、市区町村の戸籍係に届け出ることが必要です。
法律婚では現在もなお夫婦別姓は認められていませんので、婚姻ではなくパートナーシップ関係を選ぶメリットでもあります。

共同親権は認められない

親権者は母・単独となります(子は母の戸籍に入ります)。
父は、父母の協議により子の親権者を父と定めるなどしない限り、親権者となることはできません。
親子関係自体は、父は認知することで生じさせることができます。
親子関係にあることと、親権者であることの法的効果は、以下のとおりそれぞれ異なります。

親子関係により生じる法的効果 相続、扶養義務、婚姻同意、特別養子縁組同意、普通養子縁組同意、面会交流
親権者であることにより生じる法的効果 身上監護、財産管理、法律行為への同意、普通養子縁組の代諾

税金の配偶者控除は認められない

所得税や相続税の計算における配偶者控除の適用は民法上の配偶者に限られ、事実婚のパートナーは対象外です。
これに対して、事実婚のパートナーであっても、社会保険上の扶養に入ることはできます。

配偶者相続権は認められない

自分の死後、パートナーに財産を残しておきたいと考える場合には、事前に(生前に)パートナーの名義として共有持分権などを設定しておくか、契約・遺言・信託などの法的手立てを講じておく必要があります。
しかし、相続税の計算においてパートナーには配偶者控除が適用されないため、承継方法によっては、厳しい相続税リスクが受遺者に生じる可能性があります。具体的な設計はご相談ください。

 

上述したような婚姻にのみ認められる効果の方を優先的に望む場合には婚姻を選択せざるを得ないということになりますが、ご自身での判断が難しければご相談ください。

なお、婚姻を選択する場合であっても、夫婦財産契約は締結すべきです。詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

Q. パートナーシップ契約の締結は重要なのでしょうか

六法と弁護士のイメージ

パートナーシップ関係に生じるかもしれない法的効果を契約書でコントロールすることができる

上記のように、パートナーシップ関係に婚姻と同様の法的効果が生じるかどうかは、具体的な事情次第で異なります。

これはつまり、婚姻と同様の法的効果が「生じるか」、「生じないか」、「生じるとしてどのような内容となるか」といったクリティカルな問題が、最終的には裁判所によって決められてしまうことを意味します。

もし、裁判所の判断が、自身にとって必ずしも予期しない形のものであって、その時既にアンコントローラブルな内容になってしまっていたら、時にはその結果は悲惨なものとなります。

そこで、法律婚ではなくパートナーシップ関係(事実婚)を選択する場合には、パートナーシップ契約(事実婚契約)の締結が非常に重要となります。

Q. パートナーシップ契約の定め方にルールや制限はないのでしょうか

パートナーシップ関係においては、婚姻している場合に比べて、財産法・契約法の規律で自由にデザインできる余地が大きいとされています。しかし、定めた内容が通常の夫婦や事実婚の場合とあまりにもかけ離れてしまうと効力が否定されることもありますので、これまでの実例や裁判例を調査・検討の上、書面化する必要があります。

効力が否定されるか否かは、概ね以下のような事情を考慮して判断されます。

  • 内縁・事実婚に生じる法的効果に関する修正かどうか
  • 修正した法的効果は公序をなすものか
  • 当該効果は当事者にとって重要か
  • 契約書で法的効果をどれほど修正・変更しているか
  • 契約書に疑義を残さない形で明記されているか など

Q. パートナーシップ契約で定めるべき内容を教えてください

上述したように、婚姻届を提出しなくても一定の場合には、法律婚をした夫婦に発生する法的効果が「類推適用」の形をとってパートナーシップ関係を規律します。

この類推適用の余地のある効果をどのようにデザインするかが、ポイントです。

考慮すべき法的効果として主要なものとしては、以下のとおりです。

  • 貞操義務(不貞慰謝料)
  • 婚姻費用
  • 養育費
  • 帰属不明の財産の共有推定
  • 財産分与 など

Q. 内縁・事実婚として法的効果が生じるのはどのような場合でしょうか

法律婚をした夫婦に発生する法的効果(貞操義務、婚姻費用、養育費、財産分与など)について、パートナーシップ関係にあるお二人に類推適用されるかは、問題となる具体的な事項ごとに、結合の排他性・継続性、同居・家計の共同性の有無、社会・周囲の承認の有無、婚姻障害の有無などによって定まるとする考え方が近時では有力です。

社会的な意味で夫婦となろうとする婚姻意思を持って、夫婦としての共同生活を送っている状態(いわゆる「内縁」の成立要件を満たす状態)には、類推適用の余地のある効果は全て及ぶことが原則です。

共同生活の実態については、同居が一定期間継続していれば共同生活の実態があると認定される傾向にあります。婚姻の意思については、以下のような要素が判例上考慮される傾向にあります。

  • 結婚式を挙げている
  • 性的関係の継続性
  • 妊娠・出産
  • 生計の同一性
  • 夫または妻としての紹介
  • 親族の冠婚葬祭に出席といった事実 など

対して、内縁に至らないようなパートナーシップ関係(「事実婚」や「現代型内縁」と呼ばれたりもします)については、ケースバイケースです。

婚姻届を出さないという当事者の意思がどこにあるのか(出せない事情があるか、あえて出さない選択をしているのか)、共同生活の実態はどのようなものか(財布は別かなど)を踏まえて判断されることになります。

一般的には、婚姻意思が明確に否定されていれば、法的効果も発生しないと判断される傾向にあります。しかし、財産分与については、財産に対する精算的性質が強く、婚姻意思の強弱に関わらず規律される場面がありますので注意が必要です。特に資産家のパートナーシップ関係においてこの点は重要であり、パートナーシップ契約を締結すべき大きな理由です。

Q. パートナーシップ関係での財産分与はどのように規律されるのでしょうか

札束のイメージ

パートナーシップ関係解消の際の財産分与の方法は様々

財産分与の適用の有無は、婚姻意思の有無よりも、共同生活の実態が重視されています。例えば、一方が婚姻の届出を拒んでいるとみられる場合や届出に消極的な場合であっても、財産分与すべきとした裁判例があります。

岐阜家裁昭和57年9月14日審判(家月36巻4号78頁)
「婚姻意思には疑義がないではない」としつつも、約7年の同棲生活と自営業への実質的な貢献を評価して、内縁の成立を認めて財産分与を認めました。

また、財産分与は共有財産を分け合うというものですが、分け合うまでもなく初めから他方に一定の持分権があったと認定する裁判例もあります。

もっとも、共同事業による寄与とまではいえない場合や、財産形成に当たって自らの収入等からの拠出金がない場合には、持分権が認められることは通常ないと考えられています。典型的には専業主婦型ですが、家事、育児、介護等による貢献にとどまる場合も同様であり、持分権があるといった処理がされる可能性は低いと考えられます。

東京地裁平成4年1月31日判決(判夕793号223頁)
双方が建築資金を負担して取得した一方名義の不動産について、他方に出資割合に応じた共有持分を認めました。

大阪高裁昭和57年11月30日判決(家月36巻1号139頁)
共同経営の場合に、事業収益を原資として取得した不動産は、たとえ登記名義人が一方にのみあっても、一方の特有財産とする特段の合意がない場合には、夫婦の共有財産として両者に帰属するとしました。他方には2分の1の持分権が認められています。

名古屋高裁昭和58年6月15日判決(判タ508号112頁)
共働きの場合について、一方当事者名義の預金債権について、他方当事者に持分2分の1の共有持分権を認めました。

Q. パートナーシップ契約書の説明を相手にするのがハードですがどうしたらいいでしょうか

パートナーシップ契約はその性質上、万一の関係解消を見据えた内容でもあります。このため、これからパートナーになろうとする者同士にとってはその内容の取り決めに心理的困難が生じることがあるのはある意味当然です。

そのような場合に備えて、穏便かつ自然な交渉をすすめるための後方支援を受けることや、場合によっては中立的な第三者を介して取り決めるなどといったサポートを受けることも有益です。

とはいえ、そもそもパートナーシップ契約は、資産防衛の観点から必須の契約ですし、また契約には、関係解消後の取り決めだけでなく、お互いの生活や、一方が先立たれた場合のケアについてなど、お互いを想い合った様々な約束を盛り込むことが可能です。

安心して素敵な結婚生活を送るために重要な役割を果たすものであるということをお二人が良く認識することが、なによりの出発点かもしれません。

Q. パートナーシップ契約の作成方法を教えてください

作成方法に法律上の決まりはありませんが、合意内容を明確にする必要性から、以下2つの方法の中から選択して締結することになります。

  • 私製証書 当事者間の私製の合意書に署名捺印して作成
  • 公正証書 当事者が公証役場へ出頭して公証人をとおして作成

効力の有効性担保や保全の観点からは公正証書化をお勧めします。合意内容によっては、私製証書のみを作成する場合も、両方とも作成する場合もあります。

Q. パートナーシップ契約の作成を弁護士に依頼するメリットは何ですか?

資産が多い夫婦の場合、一般的な夫婦と比較して、契約内容が複雑となります。記載漏れなどがあった場合、契約が無効と判断されたり、かえって紛争を泥沼化させたりするリスクがあります。パートナーシップ契約を締結する場合は、豊富な経験とノウハウを持った弁護士に依頼することが望まれます。

また、パートナーシップ契約はその有効性の担保と、散逸、隠滅ないし偽造防止の観点から、公正証書化すべきです。

この点、公証人は、裁判官や検察官出身者が就いていることが多く、公平の立場から契約内容を確認します。財産分与をはじめとする諸規定について真実公平であっても、一見すると一方に有利となる内容とも読める場合、公証人から公平性を欠くなどとして公正証書化を拒絶される可能性があります。この時に、弁護士が代理人として交渉することで、自身の希望を法的に整理し、内容を正しく公証人に伝え、迅速な公正証書化に向けて説得する役割を果たします。

また、パートナーシップ契約を締結する際には、パートナーに納得してもらう必要があります。このとき、感情的な問題もさることながら、権利と義務の観点から基準になるラインがどこかを認識して説明をする準備を整えておくことが有用であり、弁護士であれば、そのような観点からサポートが可能です。

Q. 弁護士であれば誰でもパートナーシップ契約の作成が可能ですか?

弁護士イメージ

パートナーシップ関係、事実婚の法的問題に明るく、資産の意義をよく理解してくれる弁護士に依頼することが重要

パートナーシップ契約において一般に最重視されることは、関係解消時の財産分与に関する取り決めでしょう。もし数年後関係解消して財産分与する場合、パートナーシップ契約が締結されていなかったらどのような結果となるかを理解することが極めて重要です。

しかし、資産の多い方の場合、保有する資産の意義、当該資産の取得方法、市場、評価方法、処分先候補の確保、処分に伴い発生するコスト、今後見込まれる価値変動、アップサイド/ダウンサイド等についての十分な理解を前提にしないと、もし数年後関係解消して財産分与する場合の結果を理解することは困難です。

このように、パートナーシップ契約では、資産の意義等をよく理解し、トラブルになりやすい事項は何かを予測して予防できる能力をもった弁護士に依頼することが重要と考えます。

また、パートナーシップ契約作成の経験がない弁護士に依頼した場合、公証人の指摘に対応しきれず、当初期待した内容での作成が難しくなる可能性があります。

公正証書でパートナーシップ契約を締結する場合、公証人により内容の確認を受けることになりますが、場合によって厳しく指摘を受けることがあり、希望どおりの内容で作成してもらえないこともあります。公証人は法曹経験者の方がほとんどのため、十分な法的知識を前提として、内容を正しく公証人に伝え、迅速な公正証書化に向けて説得する必要があります。

パートナーシップ契約は近年注目されてきているものの、実例が少なく、積極的に分析している弁護士が少ないのが現状です。パートナーシップ契約について十分な知識と経験を有する弁護士に依頼されることが重要と考えます。

岩崎総合法律事務所では、プライベートバンカーライセンスを有し、資産の運用・保全に造詣が深い弁護士が、パートナーシップ契約の作成をサポートいたします。財産分与資産の多様性について、こちらのコラムで解説していますのでぜひご覧ください。

Q. パートナーシップ契約を締結したら安心していいのでしょうか?

まずは、無事に締結することができたら一安心です。

とはいえ、これはパートナーシップ契約に限らずあらゆる契約にいえることですが、締結した契約書に期待通りの効果を求めるためには、契約書の内容を正しく理解し、契約書の内容に沿って運用しなければいけません。

この意味で、パートナーシップ契約は現実的に実践できる運用かどうかも検討の上で作成する必要がありますし、契約締結後も契約書に沿って正しく運用しなければいけません。

運用が複雑、煩雑に感じる場合は、専属プライベートバンカーや弁護士、税理士などに協力を要請することも一考です。特に、自分が行っている運用が、パートナーシップ契約の内容に沿うものかどうか疑問に思った際には都度確認できる体制があることが望ましいです。

 
 

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弊所には、富裕層向けコンサルタント資格であるプライベートバンカーライセンスを保有する弁護士が所属しており、これまで様々な富裕層、資産家の方を対象にリーガルサービスを提供してきました。パートナーシップ契約の作成についても実績があります。

岩崎総合法律事務所では、ご相談者様の特性を踏まえ、今後の健全な夫婦生活のために最適なものとなるご提案をさせていただきます。

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岩崎総合法律事務所の富裕層法務サービス Legal Prime® では、設計から運用、そして万一の際も見据えて継続的なフォローアップを通して、パートナーシップ契約を真に意味のあるものとします。

婚姻ではない新しい関係性を選択されるお客様にとって最善のスタートが切れるようにサポートさせていただきます。初回のご相談は30分間無料ですので、お気軽にご相談ください
※ ご相談の内容や、ご相談の態様・時間帯等によっては、あらかじめご案内の上、別途法律相談料をいただくことがございます。

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